※※第87話:Make Love(+Reward).34









 例えどんなに、激しい雨に打たれても、
 わたしはその気持ちを、忘れることはないだろう。


 …――雨の中でも、あなたがいれば、こころは晴れ。


 そして、わたしのこころに雨を降らすは、ただ、あなただけがいい。

 だから、


 『痛みは、共有し、
  痛みを、半分こ。』















 強まるばかりかとも思われた雨だったが、次第に、シトシトと、穏やかな降りになってきた。


 雨の中、ナナと薔はずっと、熱く抱きあっていたのだけど、

 …………はっ!!

 としたナナが慌てて、ちょっと大きな声を張り上げたのです。

 「薔っ!早く帰りませんと、またお熱でも出しちゃったら大変です!」

 ってね。




 「おまえな、俺がどこまで熱に弱ぇと思ってんだよ、」
 「ぇぇえ!?だって、昔から熱に弱かったとおっしゃったのは、薔ですけど――――――っ!」

 おーっ、ぉーっ…(※エコー)






 ナナだけがあたふたしているなか、

 ぎゅうっ

 と、いきなり強く抱きしめて、

 「…ナナ、」

 優しい雨に打たれ、はっきりと、薔は言葉にした。


 「ありがとな、おまえのおかげだ。」








 「はい…?」
 ナナはドキッとし、それと同時にキョトンともして、

 スッ――――…

 少し離れた薔は、微笑んで言ったのでした。

 「面接、受かったんだな。」

 と。










 「えええ!?わたしまだ何も言ってませんのに、よくおわかりに!薔はやはり、超能力を使えるんですかぁ!?」
 「制服持ってんだろ。」


 …あ!そういえば!



 当の制服はというと、袋に入っていれども濡れている気配なのであるが、

 ちゅっ

 ふと、ナナの濡れたおでこに濡れたくちづけをして、薔はやさしく笑ったのです。

 「受かって、よかったな。俺も嬉しいよ。」









 「おおお!かわいい!ありがとうございます!」
 「おまえ今何気に、かわいい、つったな?」
 「言いましたかね!?」

 びしょ濡れではあったが、ふたりは仲良く手を繋いで、静かな雨が流れゆく歩道を歩きだした。






 ナナは“おまえのおかげ”と言われた内容について、彼女がバイトの面接に受かったことへの喜びなのだろうと、綻ぶこころがそう解釈していた。

 しかし、薔が告げた内容はそれも含めて更にとても深いところにあって、このときの真実をナナが知ることになるのは、まだまだ先のお話なのです。

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