※第81話:Love(+Quarrel?).47










 「駄目だ。」

 薔は間も置かず、即答だった。

 (おおお返事早すぎません!?)
 ナナは仰天した。



 「なぜにダメなんですかぁ!?」
 「必要ねーだろ。」
 堂々と、きっぱり言い切った薔は、

 「だいたい、おまえは何で、バイトなんしてーんだ?」

 と、問いただしてきたのです。





 (い、言えない…)

 ナナは手に汗握り、理由として使えるうまい言い訳を考えようとした。

 なぜなら、

 (あなたのお誕生日プレゼントを買うためだとは、とてもじゃないけど言えません…!)

 だったからです。



 「おい、はやく何か言え。」
 「えっと、あの、ほしいものがあるんです!」
 ナナは、嘘をつくことなく、うまい言い訳を考えることができた。
 かのように思えたのですが、

 「おまえな、そういうのはまず俺にねだれ。何が欲しいんだ?」
 「ぇぇぇええ!?」

 やっぱりそうきた。



 「いやいやいや、いくらなんでも、いつも買っていただいてばかりですので、」
 ここは何としてでも、彼の誕生日プレゼントを自力でなんとかしたいナナさんなのです。


 「おまえ、俺をバカにしてんのか?そんなん当たり前だろ。」
 しかし、薔はちょっと不機嫌になった。







 「いいか?おまえはバカ正直な上、めちゃくちゃ可愛いんだ。自覚持て、ちゃんと。ストーカーにでも遭ったら困るだろーが、」
 「ぇぇぇえええ!?」
 薔は不機嫌なまま、さらりと言いましたが、ナナは真っ赤っか。

 「お願いしますよぉ!今日寄ったコンビニとやらで、募集してたんです!」
 「あ?」
 それでも必死になるナナでして、薔の不機嫌具合は半端ないです。



 そのとき、

 「バイトなんしたら、おまえ、一緒にいられる時間減るぞ?」

 と、薔が諭してきました。




 「それは、その…」
 口ごもるナナに向かって、
 「セックスの時間も減るが?」
 薔は堂々と、こんなことまで言ってきた!


 ナナは、必死のあまり、

 「それですよ!最近、毎日エッチしてるじゃないですか!」

 と、声を張り上げてしまった。



 「イヤなのか?」
 薔は不機嫌というより、ちょっと真剣になった。


 ………うぐ。


 (えーと、そう聞かれますと、ぜんっぜん嫌ではないんですけど、それを言うのはあまりにも恥ずかしいよ…!それより、ここはそういう風に答えちゃったら、またこのひとの言うこと聞かなきゃいけなくなっちゃうよ…!)

 ナナは俯きがちに、上記の考えを導き出し、


 「あの、毎日は、ちょっと…、そもそも、薔はわたしとエッチをするために、お付き合いしてくださってるのですか…?」


 そう、俯いたまんま、消え入りそうな声で告げたのでした。





 「ふーん、」
 薔からは、不機嫌さも真剣さも、消えた。


 「なら、おまえ、今週の土曜日に劇の本番だろ?」
 「あ、はい…」
 ナナがようやく顔を上げると、彼は落ち着き払って、言いました。

 「バイトはそれが終わってからだ。その後はもう、おまえの好きにしていい。」

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