Affair.1『女王誕生?』







 超がつくほどの美形だが、それでも蕪木先輩はまったくもってモテない。
 仲良しの藤堂のほうが、蕪木ほど端正な顔立ちをしていないがサッカー部の爽やか男子であるため、圧倒的にモテる。


 ただしイケメンにかぎるという言葉も通用しないほどに、蕪木先輩はアホであるのだ。
 その究極の癒し系っぷりに、周りは最終的にはあたたかく見守るしかなくなる。

 何でも、理事長の甥というポジションにいるため今どきコネで入学できたという噂が高校入学当初には立ったらしいが、そのことを周りがネタにしてからかった際に、蕪木先輩はコネをネコと勘違いしてただ嬉しそうに笑ってネコの真似をしていたらしい。
 その笑顔はあまりにも無邪気で可愛かったらしい。
 いじめるつもりだった周りは、キュンとなった。
 以来、周りはだんだんと彼のことをあたたかく見守るようになったそうな。
 ちなみに、裏口入学ではなく、先輩はきちんと実力でこの高校に正面玄関から入学してきました。
 どうやら勉強は人並みにできるようです。







 (あああ、先輩今日もきれいだなぁあ!朝から拝めてほんとよかった!)
 恋は成就しなくて良い、ただ遠くから眺めているだけでいい夏にとって、蕪木先輩はまさに憧れの存在だった。
 蕪木先輩なら、妄想のなかで自分を「かんきっちゃん」と呼んでくれても何ら違和感はない。




 初恋で気づかされたことは、夏は面食いだったのだ。

 うっとりと、廊下の隅より合掌しながら先輩を見つめていた夏は、

 (はぁ……でも今日は、大嫌いな体育があるよ……)

 急に物憂げになり、俯き加減にとぼとぼと教室へ向かっていった。







 「奈美ちゃん先生、傘持ってきたかな?」
 「いや、持ってきてねぇと思う……」
 「よかった!」

 蕪木と藤堂は、2年の教室へと向かっていきました。

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