Affair.3『褒美授与?』








 「日向 夏さん、いる?」
 昼休みになるとなんと、蕪木の親友というか面倒見役である藤堂先輩が、夏を訪ねて一年の教室までやってきた。

 爽やかでモテモテの藤堂の姿に、教室の中は色めきだす。

 「あそこでマスクを深々と被っているのが、日向さんです……」
 探しに来たのが藤堂でもあったため、呆気なく半日で夏の身元は割れてしまった。




 示されたほうへ向かって、藤堂先輩は歩み寄ってくる。
 (まさか蕪木先輩が何か変なこと言ったんじゃあ…)
 夏は縮こまりながら、ついには目元まで隠れるようにマスクをかけた。

 「日向さん、ちょっとお願いがあるんだけど、いい?」
 「ば、場合によっては、いいです…」
 普通にマスクは大人の男性でもいけるやつをかけてきたため、顔のパーツは眉毛を残して隠すことができていた。

 変わった子だな……というのが藤堂の、夏に対しての第一印象だった。



 「じつは、奏多の様子がおかしいんだよ…」
 藤堂は心配そうに、明かす。
 「いつもおかしいと思いますが……」
 マスクで顔を覆うようにして、夏は返す。


 「はは、まあ確かに、それはそうなんだけど……」
 藤堂は失笑してしまってから、
 「でも今回は、日向さんが原因みたいなんだ、すごく君に会いたがっていて」
 夏のマスクをそっと両手で外させ机の上に置くと、微笑んだ。

 「頼むから会ってやってよ、あいつに…」







 (藤堂先輩なら少女漫画でもいける…!)
 夏は否応なしに、キュンキュンしてしまった。
 面食いだから。
 このときめきが、昨日あんなことをした蕪木先輩が夏に会いたがっているという危険な事実を上回ってしまったようだ。

 「一緒に行ってくれる?」
 「はい!」
 夏は藤堂のあとをついて、二年の教室へと向かって行った。



 (藤堂先輩を使わせたのかな?)
 モテモテ男子に連れ去られれば通常はヤキモチを妬かれるだろうが、藤堂は蕪木と大の仲良しなことと、昨日の放課後の大胆ストレートな蕪木先輩の連れ去りもあったために、クラスメートたちは夏に向かって健闘を祈るしかなかった。

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