Affair.2『調教開始?』












 「かんきっちゃんて、いつの間に、蕪木先輩と仲良くなったの?」
 目立たず暮らしていきたい夏の周りにはさっそく、いきさつを知りたいクラスメートたちが集まっていた。

 「いや、あたしにも何だかよくわからなくて…」
 夏は縮こまり、苦笑いを浮かべる。
 ほんとうにその通りなのだ、自分自身にもいきさつなどはよくわかっていないのだ。




 「蕪木先輩って、ヴィジュアルは申し分ないのにね」
 「脳内はうちらにもまったく理解できないお花畑だもんね」
 「あたしもまったくその通りだと思います…」
 夏はさりげなく、周りの意見に心から賛同した。

 「このぶんだと帰り、お持ち帰りされちゃうかもよ?かんきっちゃん!」
 「えええ!?」
 クラスメートたちはまるで他人事で、その可能性がなきにしもあらずな夏は身の危険を感じ始める。





 (あたしの初恋が全て間違っていたんだろうか?)
 地味に目立たずがモットーだったというのに、さっそく前途多難の夏は思い切りため息をついた。

 (蕪木先輩……たぶんもうあたしは、あなたのこと好きじゃないです)














 「なっちゃーん!」
 放課後になるとクラスメートたちの予言通りか、蕪木先輩は夏に向かって教室の入り口から手を振ってきた。
 無邪気な笑顔と共に。

 きゅうん…っ

 やっぱり見目は麗しくて、夏が一瞬ときめいてしまうと、

 がしっ!

 と彼女の腕を掴み、蕪木は引っ張って歩き出した。

 「今日ね、俺んち、両親とも帰り遅いから!」






 …――――ストレートすぎる誘いだな!

 夏をはじめとするその場にいた者は、口をあんぐりと開けた。



 「だからいっぱいできるよ〜!」
 「あたし自分んちに帰りたい!離せこのやろうーっ!」
 「なっちゃん、俺先輩だよ?」
 「知るか!ボケェェェエ!」

 ぐいぐいと引っ張られて帰ってゆく夏を見送っていたクラスメートたちは、

 (何をするんだろう?)

 ちょっとドキドキしていた。

[ 10/50 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧へ戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る