聖夜にラブアフェア







 どふぅっ…!

 クリスマスイブの特設会場という名のいつもと何ら変わりはない教室にて、こけしちゃんに貸してもらったノートをそら熱心に読んでいたナナはついに萌えが許容量をオーバーしぶっ倒れた。


 「ナナちゃぁん、大丈夫ぅぅ?」
 「こっ……こけしちゃんさま……こちらは、……エッチすぎる……」
 親友に介抱されるナナはハァハァと息を荒げ、こぉんなに悦んでくれるならぁぁとこけしちゃんもじつににっこにこである。
 腐女子隊の隊員たちは我先にとノートを狙っているが、他のクラスメートたちは突然始まった寸劇にしばしポカンとなった。


 「わっ、わたしも薔に……やっていただきたい……」
 支えてもらって立ち上がりながら、ナナはさりげなくもなく己の願望を口にして、
 「つまりはぁぁ、ナナちゃぁんも薔くぅんにぃ、サンタコスさせたいのねぇぇ?」
 「どひゃあああだよもうっ……タコス?」
 乙女たちの会話の盛り上がりようと言ったら(※タコスはいっさい出てきていない上に文章中にもちゃんとサンタコスとあったよ)。






 そんななか、

 ひょいっ…

 いったん机上に置かれたノートは、奪い取られた。


 ……ああああああああっ!
 ……あああぁぁぁぁっ!

 乙女たちは慌てふためき、隊員の皆さんはとたんに蝋人形のフリに努め始める。




 「ちょっとーっ!見ちゃダメです!」
 「つうことはやっぱ俺が出てくんだな?」
 ナナは大急ぎで彼氏(ノート内では受け)の目には触れないようにと、両手を伸ばし阻止にかかった。
 愛する彼女に会いにきたら例のノートを発見してしまい、薔の不機嫌さは止まる処を知らない。

 かと思いきや、ここまでくれば何も問題ないために一安心したこけしちゃんはフウゥゥと胸を撫で下ろした。





 「そ…っ、それは本当に…っ、ダメなんですってばぁ…っ、……薔っ……」
 彼が片手で高く持ち上げたノートに向かって両手を伸ばし、ぴょんぴょんと飛び跳ねるナナは思い切り涙目となる。

 「………………。」
 よって、彼女の可愛さにムラッときちゃった薔はノートとかどうでもよくなった模様だ。




 「おまえすげえ可愛いな?とりあえず俺の教室行くぞ?」
 「えっ!?いいんですか!?」
 ノートは放られ、ナナはとりあえずらしいが彼の教室へとぐいぐいと手を引かれながら強引に連れ去られて行った。
 めでたしめでたし(じゃないよ、まだ)。







 「あぁぁ、薔くぅんがナナちゃぁんを愛しすぎてて助かったぁぁ。」
 「桜葉さんてほんと、怖いもの知らずだよね……」
 すかさずノートをキャッチしたのは腐に於いてはまさしくその通りのこけしちゃんで、隊員たちは隊長の落ち着きように攻められてもいい衝動に駆られる。


 ……わりと恒例になりつつあるこけしちゃん小説で、ロマンチックに幕を上げましたよ。

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