※※第362話:Make Love(&Sex aid).53
夕月と一緒にお出かけをする予定だった当日の、日曜日の朝。
「なんと言いますか……夕月さんとお出かけをするときにこっそりエッチなことをしていないのは、……変な感じがしますね……」
物寂しいのか、ナナがとんでもない呟きを漏らした。
夕月は寛大なる心を持っているので例え見つかっても咎められないという安心からか(確実にそういうわけではないけど)、夕月とお出かけをするときはこっそり玩具を仕込んでいたりじつは媚薬を飲んでいたり、密かにエッチな試練に堪えている場合が最近は多かった。
健全な状態であるにも拘わらず変な感じがするのは、エッチな試練にとくに堪えないお出かけはむしろ堪えられなかった模様だ。
「変な感じって、どんな感じだよ……」
薔は呆れつつも彼女の赤裸々な呟きを決して受け流さない。
「言葉にできないんですけど、薔にやっぱりエッチなことをされていたいという感じです……」
「かなりしっかり言葉にできてるぞ?」
ナナは“言葉にできない気持ち”についてもっと、言葉にできない歯痒さを味わったほうが良さそうだ。
とにもかくにも自ら、スリリングなお出かけがしたいと申し出てしまった。
ふたりは今、朝食の後片付けを済ませたところで、夕月が迎えに来るのは昼頃となっており、準備に割く時間の余裕はたっぷりあった。
むしろお出かけをする前に、本格的なのをできちゃうくらいの余裕がある。
「ナナ、ちょっといいか?」
「はい……?」
スリリングなお出かけに想いを馳せていた彼女を半ば強引に、薔は調理台に向かって立たせた。
綺麗に磨き上げて、今は何の食材も置かれていない調理台である。
「そこまで言うなら下拵えでもしとくか……」
後ろから抱きしめた彼はそっと囁き、首筋にキスをした。
感じてビクッとふるえたナナはとたんに、敏感な場所が疼いてくる。
くちびるはやわらかく、肌を伝い、掛かる吐息があたたかくて背筋をぞくぞくさせる。
「あ……あっ、」
ナナは甘やかな声を上げた。
こんなことをしてもらえるなら、正直になって正解だった。
彼にだけは警戒心を緩めたまま、全力の警戒心を以てお出かけがしたかった。
という告白をしただけで、エッチなことを仕掛けてもらえるなんて純粋に棚から牡丹餅だった。
心持ちは、純粋でも劣情に満たされている。
キッチンには微かにリップ音が響き、ナナが荒らげる息づかいと混じった。
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