※第6話:Game(+Foreplay).4
ギュッ―――…
手に汗握っているナナ。
すると、とても、珍しいことが起きました。
うつむいているナナ。
そのまえに、薔は座った。
このとき、自然のなりゆきとしては初めて、ナナより薔の目線がしたにあった。
(あれ?)
予想外すぎる展開にナナが戸惑っていると、
スッ―――――――…
ふいに薔の左手が、ナナのほおに触れ、
チュ
彼は少しだけ身を乗り出し、やわらかく短く、ナナのくちびるにキスをした。
「今日はもう、帰って休んでいーぞ?ナナ。」
――――――――…
「………………え?あ、は、はい………………、」
ナナは呆然とし、目の前の薔に、
「あ、あの、ちゃんと服着て、お休みくださいね。」
と言い残して、フラフラと部屋を出ていった。
「あいつはいつも去り際、ムダに深いことを言うな。」
座ったまま薔は、笑っていた。
彼は、花子にはしなかったが、ナナには立派な“おあずけ”をした。
ボ―――――――ッ…
ナナは15階から再び、階段で下りてきていた。
「なんだったのだろうか……………?あれは、なんのエロスなんだろうか………………?そもそもエロスってなに?やっぱり辞書が必要じゃないの。」
独り言ワールドが、動揺を隠しきれません。
……………あ、あれ?
うーん…………。
(どうもなにか、とてつもない違和感を感じるなぁ。)
見上げられていたこと以外に、間違い探しだよ、こりゃ。
「うーん………………、」
なんだろう?
「雰囲気がおそろしく、やさしかったからかな?だからわたしのこと、名前で呼んだのかな?」
……………………名前?
『今日はもう、帰って休んでいーぞ?“ナナ”。』
でぇぇぇぇぇぇえぇ!?
あのひと、初めてわたしを、名前で呼んだよ!!
「きゃあ―――――っ!!」
ナナは本当にいつも、気づくのが遅かった。
(どどどどうしよう!?わたし恋しちゃってるんだから喜ぶべきなんだけど、それより恥ずかしさが勝るし、くすぐったいよ!!)
ナナが、“空の”あたまをかかえながら、階段を下りきったとき、
(あれ?)
マンションの集合ポストのまえで、手をあわせている女性の姿が目に映った。
(なんだろう?なにかあったのかなぁ?)
そしてその女性は、387歳のナナよりはるかに大人びていた。
(どなたか、お亡くなりになられたのかな?)
通り過ぎる瞬間、何気なく目をやったナナ。
その大人びた女性が手をあわせているのは、先ほどまでナナがとんでもないコトをして(されて?)いた部屋の番号の、ポストのまえだった。
(ぎゃぁぁぁあ!!まさか、ストーカーってやつ!?)
ポストの中身、盗みにきたのかぁ!?
気がつくとナナは、その女性に声をかけていた。
「あ、あの!」
「え…………?」
手をあわせ終わっていた彼女と、目が合ったとき、
「そのひとをストーカーするなら、逆にストーカーしてやりますよ!?」
だれかさんの影響たっぷりのセリフで、ナナは叫んでしまっていた。
………This is LOVE!!
,and……a little…EROS!!!!!
………………probably.
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