第5話:Game(+Spread).3




 バッ!


 それだけ言うとナナは、転がるようにして保健室を、飛び出していった。
















 ――――――――…

「ちゃんと目を見て、言えたじゃねーか。」
 保健室にて、およそ悪魔ではないけど悪魔のお言葉です。










「はぁ〜、三咲さんの大チャンスだと思ったから、理由つけてふたりきりにしてきたけど、大丈夫かしら?」
 氷枕すら用意しなかった保健室の(美人)先生が、鍵を指で振り回しながら廊下を歩いていたとき。
 ダダァ――――――ッ!
 ものすごい勢いで、ナナが突進してきた。
「あれ?三咲さん、どうしたの?」
 そう声をかける(美人)先生には目もくれず通り過ぎてから、
「どうしたのかしら?」

「先生!」
 ナナはいったん、戻ってきた。
「びっくりしたぁ!三咲さん、これから先生行こうとし」
「あのひとの風邪のほうは、どうか撃退してあげてください!」
「え?」
「それ以外は、わたくしが撃退いたしますので!」
「三咲さん?」
「よろしくお願いいたします―――――っっ!!」
 再びナナは、突進していった。



「あの子、耳まで真っ赤だったから、“それ以外”って自分の風邪のことかしら?」










 パタン―――――…

 (美人)先生が戻ってくると、薔はベッドに座ったまま、ハンカチを眺めていた。
「まぁ!ハンカチがこれほどまでに、似合うか似合わないかで物議を醸し出せるのは、おそらくアナタだけよ。」
「葛篭(つづら)では、なんの分野においても醸し出せねーがな。」
 ……………えぇえ?
 ※ちなみに(美人)先生は、葛篭という名字でした。
「それより三咲さんは、どうしたのかしら?風邪みたいだったけど、」
「あいつは俺を犯そうとしたからな、おそらく“伝染”だ。」
 えぇぇえ!?
「三咲さんて、けっこう大胆ね!見習おうかな!?」
「見習ったところで、お前の歴史は衰退の一途をたどるのみだぞ?」

 ………………ひどい。



「ところで、アナタは、三咲さんをどう“思って”いるの?ただの下僕だったら、“たちが悪すぎる”わよ。」
「たちが悪すぎるなら、まだよかったな。」
「は?」

 葛篭ではなくハンカチに向かい、かざすようにして薔は言いました。







「“想って”るなんつークソ生温りぃモンは、とっくに焼けきってんだよ。」

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