※第44話:Love(&Thorn).35






 こけしちゃん宅の前に、黒塗りのベンツが停まっている。


 「思った以上に、早く済んだ。」
 醐留権は、門に向かって歩いていた。


 「先ほどは、がっかりさせてしまったからな。いきなり訪ね、驚かせてあげよう。」
 そう言いながら笑った醐留権の目の前に、


 「よいしょ!」


 乙女を抱えた二人組が、ベランダから降り立った。



 「早くトンズラしよう。」

 トンズラって、アンタ……





 「待ちたまえ。」


 鋭い声が響いて、二人組は振り向く。


 「私のかわいい彼女と生徒を、どこへ連れて行く気だ?」





 なんなんだよもう!
 人間って、ほんとは侮れないよ―――――――っ!




 「もうやだーっ!」

 そう叫んだアダルとモンズグは、能力を最大限に駆使したため、猛スピードで飛び去った。


 「待ちなさい!」

 と叫んでみたものの、醐留権の目では追うことができない。


 そのとき、

 ヒラリ

 醐留権の目の前に、ピンク色のちいさな紙が舞い降りた。



 「おや?」

 拾い上げてみると、それはどうやら名刺のようで。



 「…ホストクラブとは、ね。」

 醐留権は呟いた。






 きびすを返した醐留権は、走り出す。


 「三咲もさらわれたことだ。どうやら私ひとりでは、手に負えそうにない。」

 彼はベンツに乗り込むと、急加速と見事な運転テクで、車道を駆け抜けて行った。












 ――――――――…

 「ワン!」

 突然、花子のけたたましい鳴き声が響いた。

 「あぁ、花子、客人のようだな。」

 と言った薔は、ベランダに出て階下を見下ろす。




 マンションに横付けされて、黒塗りのベンツが停まっていた。




 「どうやら狙われたのは、ナナだけじゃねーな、」


 真剣な表情で、薔は花子と共に、玄関へと向かったのでした。










  Fate sides with them how!?

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