※第44話:Love(&Thorn).35





 「ぇえ?」
 目をぱちくりさせたこけしちゃんのまえ、ナナは(もうおわりだ)と、思った。

 こけしちゃんとの日々が蘇り、ひどく泣きたくなる。


 「フッフッフ。驚いたようだね。」
 アダルは笑い、モンズグはニヤニヤしている。



 「ナナちゃぁん、ほんとぉぉにぃ?」
 こう聞かれたのでナナは俯き、
 「ほんとう、なんだよね…」
 涙をこらえながら、ちいさく頷いた。





 その瞬間、

 「すごぉぉおぉいぃぃ!」

 とっても明るい声で、こけしちゃんは言いました。




 ………………え?

 ナナはキョトンと顔を上げ、アダルとモンズグも唖然としている。




 「ナナちゃぁん、すごぉぉいよぉ。かっこいいぃのぉ。惚れ直しちゃったぁぁ。」
 にっこにっこの、こけしちゃんです。


 えええ!?


 「こけしちゃん!怖くないの!?黙ってたのに、怒らないの!?」
 「ぜぇえんぜぇん、怖くないよぉぉ?それに、ひとにはねぇ、内緒にしておいていいぃ秘密があるのぉ。あたしもぉ、柔道できること、ナナちゃぁんに黙ってたしぃぃ。」
 おっとりと述べる、こけしちゃん。

 「あああ!そう言えばあのときは、ほんとびっくりしたよ!こけしちゃん、かっこよすぎるよ!」
 「まさしくあたしもぉ、そんなカンジぃぃ。」



 …あれ?これは、存在忘れられてないかい?by.アダル&モンズグ




 「自慢の親友よぉぉ。これからもぉ、よろしくねぇ。」
 「こけしちゃんのおこころは、宇宙ですか!?こちらこそ、末永くよろしくだよ!」
 ふたりは手を取り合い、友情を改めて強めた。



 すると、

 「あのねぇ、ナナちゃぁん、ひとつねぇ、どぉぉしても聞きたいことがぁぁ、あるのぉ。」

 ちょっとだけ首を傾げて、こけしちゃんが言いました。


 「なんでも来いだよ!」
 ノリに乗ったナナは、受けとめようと構えた。

 こけしちゃんの質問とは、


 「薔くぅんの血はぁ、もお吸ったのぉぉ?」


 でした。




 瞬く間に、ナナは真っ赤っかになった。

 ので、こけしちゃんはその真っ赤さから、答えを読み取った。


 「いいぃなぁ、ナナちゃぁん。あたしもぉ、ゾーラ先生ぇの血とか、吸ってみたいのぉぉ。」
 「こけしちゃん!?わたしなにも言ってないのに、よく答えがわかったね!さすが!」
 ナナはもう、感動ひとしきりです。

 「それくらいわかるよぉぉ。親友だもんぅ。」
 「こけしちゃーん!」

 またまた、熱く手を取り合うふたり。






 「もう頭きた!!」


 アダルは叫んだ。





 「あ、忘れてた。」
 「あたしもぉぉ。」

 特になんてことないふたりのまえ、アダルはぶるぶると震えている。

 「寒いの?」
 「ちがうよ!今は夏だよ!」

 えぇ、この物語は、夏休み真っ只中ですからね。



 「いや、もうほんと、帰ってほしいよ。」
 「ほんとねぇぇ。いいとこなのにぃ。」

 「ふざけるな!!」







 アダルとモンズグの雰囲気は、邪悪なものへと変わった。

 「やはり、ふたり共連れてゆこう。」





 次の瞬間です。


 ふたりの口には、布に染み込ませた薬剤が当てられていた。



 「ふぅ……」

 かなり強力なものなのか、瞬時にふたりは意識を失った。



 ドサッ―――――…


 床に倒れ込む、387歳と15歳の乙女。




 「モンズグ、お前はそちらの人間を持て。」
 「明らかに小柄ですが、了解いたしました。」

 ぐったりしたナナとこけしちゃんを、アダルとモンズグは抱え上げた。

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