第42話:Love(+Friendship!).34





 さいわいにもまだ明るく、頼もしい花子の時として威嚇もあったため、無事に実家へとたどり着いたナナ。


 「ただいまぁ。」
 花子と共に玄関へ入ると、

 「あら、ナナ、おかえり。」
 チップスターを食べている母は、上がり口に立っていた。


 (おおお!?)
 びっくりしまくったナナに向かって、続ける母。


 「どうしたの?倦怠期?マリッジブルー?それとももうその子に乗り変えたの?」




 はいはい!?




 「お母さん!わからない言葉は辞書引くよ!この子は花子ちゃん!わたしそんな最低じゃない!」

 順を追って、きちんと返したナナ。


 「それくらいわかってるわよ。からかっただけよ。」
 「お母さん!意地悪はやめてよ!」

 拗ねたような娘のまえ、クスッと母は笑って言った。

 「そうね。あなたに意地悪していいのは、薔くんだけね。」



 すると、みるみるうちに、ナナは真っ赤になった。



 (今までにない、可愛い反応ね。)
 感心する、母。



 なんだかナナは、もじもじし始めた。

 「あの、お母さん、花子ちゃん、上げても大丈夫?」
 「もちろんよ。お母さんが、面倒見てるわ。」

 ………えっ?

 「い、いいの?」
 「だってこれからあなた、お友達来るんでしょう?」

 やっぱお母さん、すごいよ―――――――っ!!

 万歳したいくらいの、ナナ。


 そして彼女は気づいた。

 (花子ちゃん、ずっとお尻尾振ってらっしゃる!)






 そのとき、

 「ナナぁ!?どうしたんだぁ!?ホームシックかぁ!?」

 ひょこっと顔を出した父が、

 「うわぁ!立派なお犬ちゃんだね!かわいいなぁ!」

 花子に飛びついた。

 「お父さんはなぁ、子供の頃、セントバーナードになりたかったんだよ!」

 …いや、なれてないし、いつのお話だよ。




 「プッ、」
 表情変えぬまま、母が吹き出した。

 「ハニー?どうしたんだい?」

 父と母のこの光景を、娘はキョトンと眺めており、花子は終始尻尾を振っていたんだとさ。







 ほどなくして、

 ピンポーン

 こけしちゃんが、到着したようである。

 花子はすでに父と母が、リビングへと手厚く歓迎していた。


 ガチャ――――…

 ドアを開けると、

 「グスッ…、ナナちゃぁぁん…、」
 まだ泣いていたこけしちゃんは、

 「うわあぁぁぁぁぁん…」

 ナナに抱きついた。


 「こけしちゃん、会いたかったよ。」
 もらい泣きをしそうなナナは、それでも涙を必死でこらえ、こけしちゃんを抱きしめながらあたまをそうっと撫でていたのだった。









 「ナナちゃぁぁんのお部屋はぁぁ、とぉってもぉ、きれいなのぉぉ。」
 まだ泣いているこけしちゃんは、ナナの部屋にて感心している。

 「いやぁ、わたし、お掃除が好きなもので。」
 ちょっとドキッとしてしまったナナだが、確かに掃除は好きなようである。
 しかし今はきっと、殺風景なんだよねぇ、うん。


 「それよりこけしちゃん、なにがあったのかな?」
 テーブルのまえに向かい合って座り、ひどく心配そうに尋ねたナナへと、

 「あのねぇぇ、」

 こけしちゃんは、穏やかにかなしそうに、語り出した。

[ 465/550 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る