第42話:Love(+Friendship!).34








 ご説明しよう。

 こけしちゃんがヒロイン的存在ということは、ヒーロー的存在はもちろん、眼鏡のあの先生です。


 そして奥深くでは、まさしくヒロインには内緒で、まさしくヒーローの生け贄計画が始動されました。



 つまりは、そういうことなんです。












 『グスッ…、』
 電話の向こうで、こけしちゃんは泣きつづけている。

 「こけしちゃん、どうしたのか、わたしはちゃんとお話を聞きたいよ?」
 オロオロしながらも、電話越しにやさしくナナは、こけしちゃんへと声を掛ける。


 すると、

 『ナナちゃぁぁん……、』

 涙声のこけしちゃんは、こう尋ねました。


 『直接お話したいからぁぁ…、ナナちゃぁぁんのお家にぃ、お邪魔しても、いいぃぃ?』


 と。





 ……うひょお!
 わたしの家、ご存知なの!?
 いや、しかし、引っ越しの事実については、こけしちゃんにまだご報告してなかったよ!


 「え、えーと、」
 引っ越しについてお伝えすべきか、失恋したと言っている親友にそんなことを伝えていいのか、オロオロのナナが思案していると、

 『やっぱりぃぃ、迷惑ぅ、だよねぇぇ…、』
 こけしちゃんは、そう解釈してしまったようだ。


 とっさにナナは、
 「迷惑だなんてこれっぽっちも思ってないよ!?大歓迎だよ!お気をつけて、いらっしゃって!?」
 明るくそう叫んでいた。


 『ありがとうぅ、ナナちゃぁぁん…、40分くらいで、着くからねぇぇ。』
 こけしちゃんの声もすこしだけ明るくなって、

 『じゃあぁ、あとでねぇぇ。』
 「うん!お待ちしてるよ!」

 電話は切れたのでした。




 (こうしちゃいられ)
 「おい、」

 ギクリとしたナナが振り向くと、きちんと着替えた薔は堂々と彼女を見つめていた。


 (うぎゃあ――――――――――――っ!!)


 「すみません!しばし実家に帰ってもいいですか!?」
 「あぁ。おまえの声だけ、丸聞こえだったからな。」

 そりゃそうである。


 「ほんとすみません!すぐ行ってきます!」
 「待て。」

 ……………え?

 よくよく気づくと薔は、花子にリードをつけてスタンバイさせていた。


 「危ねーから、花子を連れていけ。」


 ……えぇえ!?


 「いや、わたしヴァンパイアなんで、大丈夫ですってーっ!」
 必死になるナナですが、
 「なに言ってんだ?」
 落ち着き払った薔は、言い放ちました。


 「おまえはヴァンパイアである以前に、女だろーが、俺の。」



 キュンとしすぎたナナさんは、勢いあまって絶句した。

 「ほら、はやく行ってこい。」
 リードを手渡される。

 「もう、ほんと、ありがとうございます!」
 絶句の後、うるうると口を開いたナナは、

 「お土産買えたら、買ってきますーっ!」
 そう叫んで、花子と共に出ていった。






 「土産買う暇なん、潰して帰ってこい。」
 ドアに向かって呆れたように、薔はこう言ったのでした。

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