第3話:Game.1
遠い意識が、ピアノの音をとらえた。
………だ……れ…………?
この曲は、なんて言ったっけ?はるか昔に、聴いたことがある。
懐かしいなぁ。
(…………それより、めちゃくちゃ、上手だな…このひと…………………)
――――――――…
「……………!?」
「ちょっと、ストップ!」
校庭で練習をしていた、吹奏楽部の音が止んだ。
「どうしたんですか?先生…………」
「シッ!」
音楽教師は、しばらく黙っていた。
「?」
生徒が皆、不思議に思っていたとき、
「………みんな、聴こえる?」
と、音楽教師が生徒たちに尋ねた。
「なにが、ですか?」
「あのピアノの音よ。」
生徒たちは、顔を見合わせる。
「音楽室から、聴こえてくるわ。」
音楽教師がそう言ったので、皆が耳を傾けると、
「本当だ…………聴こえる……………」
かすかに、音楽室のほうから、ピアノの奏でる旋律が聴こえてきた。
「なんて………深い…音色なのかしら?」
圧倒的に天才的。
それなのに、こんなにも色濃く、絶対的なかなしみを感じるわ。
「………先生……………?」
泣いていた。
音楽教師はただ、ただ、底知れぬかなしみに、こころ打たれていた。
悪魔は、ピアノが弾けました。
習ったことは、ありません。
独学で、弾いています。
「やたら面白くはなってきたな。」
ゆびさきは鍵盤を、愛撫しているとでもいうのでしょうか?
「俺がお前を、為付けてやるよ、“ナナ”。」
………今、なんて言いました?
「ねぇ、ちょっと、あれ、すごくない!?」
「うんうん!めちゃくちゃキレイな音!」
下で生徒たちが、騒ぎだした。
「だれが弾いてるんだろ!?」
好奇心旺盛で、とてもよいことですが。
「見に行こうよ!」
「うん!行こ!」
旺盛すぎるのも、どうかと思いますよ。
「見に行ってきます!」
ダッ!
「あっ!先生!」
音楽教師が走り出したので、
「ぼくたちも行きます!」
つられて生徒たちも走り出す。
みんなでワイワイ、楽しいな(どこがだ?)。
いったい何人の人間が、音楽室に向かっているのだろうか?
…………ここでいったん、およそCMに入ってもいい?
さっき、すっ飛ばしちゃったから。
ごめんね?
Game<遊戯>.1 captured...
…maybe………I'm ready.
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