第35話:Game(=Family).30







 The power of giving you a tight hug is given.




 弱さもぜんぶ、

 さらけ出せる、

 強さをください。










 シャラ―――――…

 “7”のネックレスを、薔が首に飾りつけた瞬間だった。



 「薔、」



 やたら大人びたハスキーヴォイスが、彼へと声を掛けたのだ。



 特に驚いた様子もなく、ゆっくりと顔をそちらに向けた薔は、ぽつりと言った。




 「……夕月さん、」







 えーと、このとてつもない違和感は、なんなんだろうなぁ。





 そこに立っていたのは、スーツをラフに着こなした、めちゃくちゃダンディな男性であった。

 スラリとして背が高く、いかにも洗練された雰囲気が滲み出ている。



 その、夕月と呼ばれた男性は、薔に語りかけた。


 「なんでお前は本名使ってまで、またこの世界に入ったんだ?」




 「あんたには、関係ねーよ。」

 最初、ひどくやさしい声で夕月の名を呼んだ薔は、鋭い声色になってきっぱりと言い切ったのだが、

 「しかも、よりによって、沖里なんかのもとで、」

 はっきりと、夕月はつづける。



 「……………、」

 薔が黙っているので、

 「なにかあるなら、俺が力になる、言うんだ。」

 力強く、夕月は言い放った。




 だが、

 「俺とあんたはもう、何の関係もねぇ。帰れ。」

 静かに薔は、こう告げた。




 「関係ないなら、どうしてお前はさっき、あんな悲しそうな顔をしたんだ?」

 呟きのごとく言葉にした夕月は、


 「また、ゆっくり話でもしような。」

 無言でいた薔に背を向け、片手を振ると、優雅に歩いていった。





 「………………、」

 まだ、薔は黙っていたのだが、


 「ちょっとーっ!いまのかた、世界的スーパーカメラマンの、夕月 鎧(ゆうづき がい)じゃない!?」

 スタジオ内が、ざわめきだした。



 「本物を拝めるなんて、今日の運勢どうなってるのかな?」
 「雰囲気すごすぎたね、」

 などと会話をしているまわりは、

 「あのかたの素晴らしいカメラテクで、薔くん撮ったら、どうなるんだろ?」

 かなりテンション上がっていた。





 これらは、いっさい聞こえていない薔なのだが、

 ギュ――――…

 ネックレスに手をつよく当てると、ほんとうに微かな声で、


 「…わざわざ、ありがとう、ございます………、」


 ただまえを向いて、そっと、述べたのだった。

[ 380/550 ]

[前へ] [次へ]

[ページを選ぶ]

[章一覧に戻る]
[しおりを挟む]
[応援する]


戻る