※※第34話:Make Love….3





 チャポン――――…

 湯船につかる、ナナは、


 (お父さんって、ほんとは頼もしいのかも…、)

 改めて、父にも敬意を覚える。


 (そうだよねぇ。そもそも、お父さんがいなかったら、生まれてこなかったわけだし、)


 それに、ヴァンパイアに、ならずにいたら――――――…



 「……………、」

 ナナは、ただ黙って、浸透してくるぬくもりを感じていた。







 やがて風呂からあがり、廊下を歩いていたナナへと、

 「あ、ナナ、ご飯できたけど、食べる?」

 真っ黒なエプロンをつけた母が、キッチンから顔を出して声を掛けてきた。



 「あんまり、お腹、空いてない、」

 控えめに明かす、ナナですがね、



 「最近あなたは、ちっとも食べないからダメよ。そんなんじゃ、大切なときに、ちから出ないわよ?」



 ちからづよく、母は言い聞かせる。




 …――あ、

 そうか!



 「ありがとう!お母さん!わたし、ちゃんと食べる!」

 ナナは勢いよく、階段へ向かおうとしてから、


 振り向いて、


 「お母さん、今度、料理教えて!」

 と、声を張り上げた。



 「いいわよ。どんなメニューでも、任せなさい。」

 母はにっこりと、微笑む。




 「ありがとう!」

 ようやく笑えたナナは、バタバタと廊下を駆けていった。




 「さて、ぬか漬け切りますか。」

 腕まくりをする、ナナ母。

 いつの間にか、ナナ宅には立派なぬか床が用意されていた。






 ちゃんと家族揃って、食卓を囲む。

 ありがたいのと同時に、ナナは、無性にせつなくなったのだった。







 その夜。

 泣きつかれすぎたのか、ナナは日付が変わっても、眠れずにいた。




 ふっと、ベランダに出てみる。


 大雨がまるでなかったかのように、夜空には星が瞬いていた。

 サワサワと、夜風は吹いてゆく。



 「……、やっぱり、星空、なんか足りないな、」

 キラキラしているのに、それは、そこはかとなくかなしくて。


 「ちゃんと、謝りたいな…、」

 そう呟いたナナの頭上、流れ星は静かに、落ちた。




 しばし星空を見上げていたが、ベッドへ戻って、


 「……………、」


 目を閉じて眠りを待っていると、夜明け近くにようやくそれは訪れたのだった。

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