第33話:Game(&Each…).29





 「なんで…っ……、なんでっ…………!?」

 転げ落ちてもおかしくないけんまくで、ナナは階段を駆け下りる。




 こけしちゃんが、夕方以降は激しい雨だって、言ってたじゃんか!


 それよりなにより、わたしは、ちからになるって、決めたじゃんか!




 「なにやって、るんだよぉ…っ!わたしはぁ……っ!」



 玄関にあった、この間買ったばかりの傘を掴んで、


 バ―――――――ン!!



 靴も履かずに、ナナは大雨のなかへと飛び出していった。








 掴んだ傘はさしていないので、全身につよい雨粒が打ちつける。


 「どこっ……!?はやく、この傘…っ、」

 ちからの限り走っているナナは、まだ足りないと指輪をはずそうとしたのだが、


 ドテッ――――…!


 どしゃ降りの雨のなか、滑って、激しく道路に倒れ込んだ。




 バシャッ――…

 雨が流れゆく道路、ひどく向こうへと、傘は飛んでゆく。



 「うぅぅ………」
 制服には、泥混じりの雨がにじんで、重く体に張りついて。


 「うぇぇぇ………!」

 ナナの顔にも、泥がついて、それでも構わなくて、彼女は倒れたまま道路に顔をうずめて泣き叫んだ。



 「うわあぁぁん!」



 混じりゆくのか濡らしてゆくのか、激しい雨は降りしきる。




 「ごめ…っ、ごめん…なさい…………」

 雨と泥にまみれたナナは、ただ、繰り返したのだった。









 …――雨のとき、

 あなたはいつも、

 手を差し伸べてくれたのに、


 わたしは、

 傘すら差し出せなくて、

 ほんとうに、ごめんなさい。





 どうか、

 あの日、みたいに、

 熱を出したりは、

 しないよう、



 どうか、

 お願いですから、

 お気をつけて、





 どうか――――――…










 …――I'm sorry truly.

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