第33話:Game(&Each…).29





 グッ――――…

 「…………っ、」

 ナナは言葉も出せずに、拳を固め、俯いた。


 「ちゃんと食ってんのか?」
 目のまえで薔は問いかけるが、返事なんてできっこない。



 カタカタ……

 そしてとうとう、ナナの肩は震えだしてしまった。



 「どーした?」

 その様子の異常さに、薔は勢いよく近づく。


 「大丈夫か?」

 そしてナナの顔を、覗き込んだ瞬間、




 「帰ってください。」




 はっきりとした声で、ナナは言ったのだった。






 「……………、」

 薔はただ、黙っている。


 「もう、苦しっ…、息…が………、」

 ナナは胸元をおさえて、擦り切れた息を吐く。


 「帰って……、」





 …――ちがう、

 ちがうよ、

 こんなこと言いたいんじゃ、ないのに――――…





 「こんな、苦しそうなおまえ残して、帰れるか?」

 薔の伸ばした手は、ナナの肩に置かれようとした。




 「さわらないで!」



 パシッ―――――…



 しかしナナは、その手すら、払いのけてしまったのだ。






 「もう…、やだ……苦しぃ………」

 ナナはゼェゼェと、俯いている。



 「あぁ、わかったよ。」

 ただ静かに言い残して、薔は部屋を出ていった。






 「うっ……う…っ…………」
 俯いたままのナナの目から、ポタポタと涙が落ちる。




 そのとき、


 バシャッ


 窓を、大粒の雨が、叩いたのだった。






 「えっ…………!?」
 驚いたナナは、顔をあげる。



 大粒の雨は数を増し、一気にどしゃ降りへと変わった。




 「あぁぁ……っ、」

 ナナの目から、さらなる涙はあふれ出して、



 「わああぁぁぁーっ!!」


 悲痛な泣き叫びをあげた彼女は、転がるようにして部屋を飛び出した。

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