第33話:Game(&Each…).29





 「う…っ………うぅっ…………」

 しゃくりあげて泣いていたナナだが、


 ふらっ


 そのまま、歩き出した。



 「あっ!大丈夫ですか!?」

 何人かが、追いかけてくる。


 「どこへ行くんで」
 「すみません、ひとりにしてください、」

 泣きながらではあるが、ナナははっきりと告げた。


 「大丈夫です、ありがとう、ございます、」

 そして彼女は、よろよろと歩いていったのだった。


 「…………、」
 なんだかその姿があまりにもかなしくて、まわりは言葉を失う。

 心配でも、それ以上追いかけることが、できなかった。







 「うわあぁ…………」
 泣きながら歩いていたナナの、鞄のなかで、


 携帯が、着信を告げた。


 びくびくっ……!

 ナナの驚きようは、凄まじかった。

 心臓の鼓動が、速まりすぎて、止まってしまってもおかしくはないほどで。


 恐る恐る、鞄から携帯を取り出して開いてみると、




 こけしちゃんからの、お電話だった。




 「こっ、こけしちゃんっ…!」

 すがる思いで、ふるえる手は必死に通話ボタンを押す。

 「も、もしもし!」

 涙に濡れたくちびるは、明るい声を絞り出した。



 『ナナちゃぁん?』




 ぶわっ

 このときあふれだしたのは、ただ、涙だった。




 「こけっ……、こけし、ちゃ…っ、」
 うまく言葉が、出てこない。
 明るい声なんて、もう無理だ。


 『ナナちゃぁん?どおぉしたのぉ?』

 ひどく心配そうな、こけしちゃんの声が響く。


 「ごめ…っ、こけし、ちゃ…っ……、うっ…う………」
 せきをきったように、ナナはまたしても泣きじゃくる。


 すると、

 『ナナちゃぁん、いまどこに、いるのぉ?』

 こけしちゃんは、こう尋ねてきた。


 「え………?」
 泣きはらした目を、開くナナ。


 『教えてぇぇ?』
 やさしく、なだめるようだが、心配そうな声でつづけるこけしちゃんに、

 「え、えと…、」

 キョロキョロしてから、ナナは、


 「あ、中央公園て、ここに、書いて、ある…、」


 と、答えた。




 『いまからすぐに行くから、待っててねぇ。』



 するとこけしちゃんは、はっきりとそう言って電話を切ったのだった。





 「ありがとう…、こけしちゃん……、」

 すこしだけナナは落ち着いてきたのだが、

 「気づかないうちに、ここまで、来てたよ…、」


 中央公園を見つめながら、そう呟いた。

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