第32話:Game(+Game).28





 「よくよく気づくと、授業はもう終わってるよ〜。」
 ナナは、背伸びをする。


 ちょうど歩いているのは、職員室のまえで、


 「あ、こけしちゃんだ、」
 こけしちゃんを見つけたナナは、お礼を述べようとした。



 「こけ」

 しかし、およそニワトリになった部分で、ナナは言葉を留めた。



 はにかんで笑うこけしちゃんは、醐留権ととても楽しそうに、話し込んでいたからだ。



 なんだか、重なるものが、その姿には、あった。



 ナナはにっこり笑うと、教室へ向かった。






 教室には、だれもいなかった。

 鞄を掴んで歩きだしたナナは、


 ふと、辿ってみたくなったのだ。





 家路には着かず、ひとりバスに乗り込んだ。










 ―――――…

 懐かしい街並みを、歩いていた。

 傷心ではない、きっと、ただ、目の前にしたかったのだ。

 だがこれは、何より、不確かでも絶対的な予感だったに違いない。




 ふっと、通りすぎてゆく女のコたちが、

 「ちょっと!駅前のポスターの男の子、かっこいいなんてもんじゃなかったよね!」
 「わかる〜!あれ、ほしい〜!」

 などと、騒ぎながら歩いていった。


 ナナは別に、なんてことなく歩いており。

 ……いや、そんなこと言ったって、あのひとのほうがすごいんだって。

 などと考えていた。





 ほどなくして、駅が見えた。

 「ん?」

 なんだか、見上げている人だかりがある。


 「さっきのかな?」
 ナナはこのとき、特に見上げはしなかった。



 駅の真ん前。

 「えーと、わたしはこのあとちゃんと、帰れるのかな?」

 たどり着いたナナは、キョロキョロした。




 「え――――――…?」

 そして凍りついた。




 とっさに俯き、ドクドクと脈打つ心臓を抑えこむ。




 「え…?え?なんで?なんで?」

 開かれた瞳は、またしてもまばたきを失って。



 「なんで―――――…?」

 恐る恐る、顔をあげた。







 あのひとよりすごいのか、確かめる余裕なんて、なかった。


 いや、それよりなにより、おそろしいほど確かに、





 そこに掲げられていたのは、紛れもない、そのひとだった。











 …――――Do what?

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