第32話:Game(+Game).28





 「ナナちゃぁんと薔くぅん、おはよぉうぅ。」

 席に着いたふたりへと、ニコニコ顔でこけしちゃんが朝の挨拶をする。

 「おはよう!今日もかわいい、こけしちゃん!」
 ナナも、こけしちゃんにはやっぱり及ばないがニコニコと挨拶を返して、

 「あぁ、桜葉、しばらくこいつと話してやれ。」
 席にふんぞり返った薔は、ナナの心中をさとった。



 「エヘヘぇ。」
 こけしちゃんはほっぺたをピンクにして、はにかむ。

 (かわいいよ〜!)
 ナナは、やっぱりキュンとした。



 「ナナちゃぁん、久しぶりだねぇ。会いたかったのぉぉ。」

 するとこけしちゃんは、にっこりと告げた。




 ………か、感動!



 「わたしもこけしちゃんに、一番に会いたかったよ!じつのところ最も会いたいひととはずっと一緒にいたもんで、こけしちゃんにはとーっても会いたかったんだよ!」

 感動のあまり、ナナは衝撃的な事実を叫んだ。


 「ナナちゃぁんは、大胆だねぇぇ。見習うぅ。」

 こう返してきたこけしちゃんだが、ほかのクラスメートたちは、


 ……え?
 三咲さん、まさか……、


 こころでツッコミかけた。




 「あたしもゴルゴンゾーラにぃ、会ってみたいなあぁ。」
 「こけしちゃんなら、会えるよ!若干、ゴルゴンゾーラさんについては何点か疑問を抱いたけど、あの人もお優しいからね!」

 ナナはこけしちゃんの手をつよく握りしめて、それとなく色々わかることを述べた。


 「見てくれたのぉ?」
 「もちろんだよ!」

 こけしちゃんは、ぴょんと飛び跳ねる。


 「ありがとうぅ、ナナちゃぁん。あたしのゴルゴンゾーラもぉ、なかなかでしょおぉ?」
 「なかなか、なんてものじゃないよ!こけしちゃんと、とってもお似合いだよ!」

 「ほんとぉぉにぃ?」
 「うん!」

 手を握りあったまま、ふたりははしゃいだ。


 「ナナちゃぁん、ほんとはもぉっとお話したいんだけどぉ、今BLのいいシチュエーション浮かんじゃったからぁ、メモるためにいったん席に着くねぇぇ。ありがとうぅ。」
 「うん!こちらこそ、ありがとう!」

 ナナはやはり、こけしちゃんへのツッコミは見落としたうえに、BLについて、はてなマークを浮かべ忘れた。


 「またねぇぇ。」

 にっこりと手を振って、席に戻っていったこけしちゃん。


 何気にこのやりとりは、隣の席にも全部聞こえていた。




 そんでもって、懐かしいやりとり再びの前に、ナナはトイレに行きたくなった。

 幸いなことに、ちゃんと学校のを使えていた。







 シャア――――…

 洗面所で手を洗い、いくらか趣味がよくなってきたと思われるハンカチで拭く。

 廊下に出ると、人気がなかった。


 「え?まさか、もうホームルーム始まってるの?」

 慌てたナナは、走りだす。



 ちょうど、トイレの隣にある階段の前にさしかかったとき、



 ドンッ!



 そこを降りてきたと思われる人物と、ナナは激しくぶつかった。


 「ほえっ!?」

 廊下に尻もちをつく、ナナ。






 「いたたぁ。」
 顔をしかめていると、


 「大丈夫か?君、エロいパンツ丸見えだぞ?」


 頭上で、低い声がした。



 ………………はい?


 初めて聞いた声に驚いたナナが顔を上げると、






 「…ゴ、ゴルゴン……?」




 目の前に、アニメの世界から飛び出してきたかのごとく、ゴルゴンゾーラさんにそっくりの男性が立っており、静かに彼女を見下ろしていた。

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