※第27話:Game(I'm Toy).25










 すこしだって、だいたんだって、

 近づいてほしい。


 そばにいてほしい。











 「ん………んっ……………」
 ソファのうえで乱れて、激しいキスを交わしていた。
 息が止まりそうなほど、あたまがおかしくなりそうなほどに、互いがほしくてたまらない。


 「は………………」
 やがてくちびるを離すと、ナナはかなり火照っており、薔は細めた瞳で彼女を見つめていた。

 「ナナ、」
 「は、はい…………」

 ほおをそっと撫でられながらの、囁き。

 「キスだけじゃ、やだ。」
 「え……………?」
 ナナはすこし、目を開く。

 そして見下ろした薔は、せつなげに瞳をうるませていた。

 「つづき、シよ?」
 その言い方が、あまりにも色っぽくて。

 「あ、あの……………」
 戸惑うナナに、

 「ダメか?」
 甘えたまま、薔は問いかけます。


 「い、いえ、なんといいますか、たぶんお父さんは心配してるんで、家に帰ったほうがいいかと、」
 まぁ、父だって、母がいれば心配ないし、うまくやってくれているだろうが、ナナは心臓が張り裂けそうなので、いわば言い訳をしていた。

 すると、



 「帰さねぇ。」



 鋭い声で、薔は言った。




 「え――――――…?」
 ナナはドキッとして、射抜かれた感覚にとらわれる。
 「どーしても帰りてぇなら、俺を殺してから行け。」
 声はそのまま、薔は力強く言い放った。

 「な、なにを、おっしゃって…………?」
 戸惑うばかりのナナに、


 「いま帰られるぐれぇなら、殺されたほうがマシだ。」


 厳しい表情で、瞳をうるませて、薔は告げます。




 「そんなぁ…………」
 ナナは泣きそうになって、彼を見つめる。
 「もうガマンできねーよ、ナナ。」
 そんな彼女のほおを挟み込み、くるしげに薔は言う。


 「俺はおまえがほしくて堪んねぇのに、おまえは平気で帰れるんだな。」


 この言葉のあと、薔は静かに手を落とした。



 「……だったら、いっそ殺してくれ。」


 そしてただ、せつなく微笑んだ。

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