※第21話:Game(in Ruins).19







「やめろ―――――――――――――っ!」

 すこしからだを起こしたナナの悲鳴が、廃墟に響き渡る。


 彼女にまたがるベンジャミンは、すでにベルトを外し終えていた。

 ジィッ

 そして、いそいそとチャックは下ろされてゆき、


 全裸の引きを目の当たりにするかと、ナナがきつく目をつむった瞬間、





 ガッ―――――…!




 彼女のうえで、ベンジャミンは首根っこをものすごいちからで掴まれたのだ。


「ぐぅっ………!?」
 呻いたベンジャミンは、


 ダン!!!!!!


 首根っこだけで持ち上げられ、激しく壁に叩きつけられていた。



「うぎゃあ………!」
 情けない声をあげて、ベンジャミンは床に倒れ込む。





 何事かと思ったナナが恐る恐る瞳を開けると、



「大丈夫か?」



 彼女のとなりにしゃがんだ薔が、顔を覗きこんだのだ。




 ナナはまばたきを、このときは押し寄せる感動から、しばし忘れた。




「おまえは、泣かなかったんだな。」

 撫でるほどの、やさしい声で、


「偉いぞ?」


 薔はナナに言い聞かせた。





「うぅ……っ、うっ…うっ…………」
 堰を切ったように、ナナの目からは涙があふれだした。

「うわ――――――ん!」
 ひしと、薔に抱きつく。
 抱き返して、
「怖かったんだな。」
 と言った彼に、

「違うんです!会いたかったんです――――――っ!」

 号泣のナナは声のかぎりに、叫んだのだった。







「なんで、生きてるの?」
 ベンジャミンは、唖然とへたりつくしていた。







「うっ………う……………」
 安心して、落ち着いてきたナナは、

「おまえ、ここで待ってろ。」

 力強く、言われた。

「は……はい……………」
 彼女が頷いてから、




「さて、と、」




 立ち上がった薔は、有無を言わせぬ目つきでベンジャミンを見下ろした。





「仕置き決定、だな。」







 ヒヤリと寒気がしたベンジャミンに向かって堂々と歩み寄り、見下ろしたまま、薔は厳しく言う。

「まだなんもしてねーのに、全裸になるやつがいるか?」

「え………………?」
 ベンジャミンは、目をぱちくりさせた。

「んなみっともねぇ焦りオトコは、女をイキにくくするだけだぞ?」
「えぇえ!?そうなの!?」
 このとき、ベンジャミンは身を乗り出したため、自身では気づかないうちに、はみ出させていた。


「あのぅ…………、」
 落ち着いたためナナが声をかけると、
「あぁ、おまえは絶対に見んな。むこう向いてろ。」

 そう、薔は命じて、



 パシャッ




 ベンジャミンを、写メった。

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