第20話:Game(+Kidnapping).18
薔と狼の短い対峙を、木のうえからオペラグラスを使って見ていた、ひとりの女がいた。
「すごっ!やっぱりあのひと、すごいわ!」
枝に衣装が引っかかって仕方ないその女は、先ほどのフランス人形もどきだった。
「うーん、ベンジャミンとは長い付き合いだけど、きっとこれは敵わないわ!」
そして彼女はやたら、ワクワクしていた。
「ていうか、ベンジャミンっていつも血液パーティーに誘ってくるから、正直うっとおしいのよねぇ。」
どうやらベンジャミンは、現代の言葉に置き換えると、いろんなひとにウザがられているらしい。
「こうなったらもういっそあのひとに、ベンジャミンを懲らしめてほしい気分だわ!」
フランス人形もどきは、楽しそうに言った。
「あ、でも、このあとどうなるか見届けたいけど、アタシ、デートだよ。」
もどきは木から、降り立つ。
レースが引っかかって、けっこう裂けたが彼女はまったく気にしていなかった。
「うーん、でもこれから会うカレを、あのひとと比べちゃいそうで怖いよ?」
と言ったもどきは、
「……………………、」
しばらく黙って、
「敵うとこ、ひとっつもないわ。」
てへぺろをした。
このもどきに気づいていた薔だが、別になんてことなく狼を引き連れて堂々と歩いていった。
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