※第10話:Game(+Esthetic).8
「……はぁっ、はぁっ……」
ふたりして折り重なって、激しく息をしていた。
ナナが噛みついていた薔の胸元は、血がにじんであかく筋をひいていた。
そしてシーツには血液がにじみ、やたら乱れきっていた。
ラブホの従業員たちも、まさかこの血痕が、吸血行為によるものだとは、だれも思わないであろう。
「……っ、お前…そこ…、キレイに…舐めろよ……?」
「は…はい………」
ナナは舌でやさしく、薔の胸元の血液を舐めとった。
「は……っ、は…ぁっ……」
その間、彼はずっとぐったりとしたまま、途切れてしまいそうなほど深く息をしていた。
「時間、だな。」
そうこうしているうちに、やがて2時間は過ぎていた。
ヴゥン――――…
無言でエレベーターに乗った。
ナナは激しくドキドキしていたが、薔は血液をかなり失ったからか、瞳を閉じて、堂々とではあるが壁に寄りかかっていた。
「あのぅ………」
「なんだ?」
恐る恐る尋ねたナナを、すこし目を開けて流れるように見る。
「本当にすみません、大丈夫ですか…………?」
「あ?」
やたらつらそうだが、薔は言った。
「大丈夫に決まってんだろ?よって、心配すんな。」
そして再び、瞳を閉じる。
「でも………、」
「とりあえず今は、黙っとけ。」
「は、はい……………」
そのあとはまたしても無言のまま、やがてエレベーターをおりて、チェックアウトでやたら薔を心配する受付のおじちゃんを威圧感で安心(怯え?)させ、ホテルはあとにした。
薄暗い空には、星がひろがっていた。
「おぉ……っ!キレイな星空ですね!」
ナナは感動のあまり、星空をあおいだ。
「ああ、キレイだな。」
薔もおなじ星空を、見上げていた。
キレイなものはきっと、キレイなものを一番に一緒に見たいひとと見たとき、その美しさと価値を、存分に知らしめてくれるのかもしれない。
それは、過ぎれば思い出であるが、どうか記憶のなかでずっと、輝きを増していきますように―――――――――…
おなじ空の下で、おなじ空を見上げていた。
「それより薔さんは、ご自身のちからで帰れるのですかぁ!?」
「あ?」
ナナはひどく心配したのだが、
「バカにしてんのか?」
の一言で縮こまり、
「逆に俺がお前を、送ってくか?」
とまで言われて、ものすごく心配ではあったが、そこで別れて帰路についた。
後ろ姿を見送ってから、ナナは歩きだした。
よくよく考えたら、自分の家はそんなに遠くはなかった。
耽美なんだか、なんなんだか。
そしてまた一週間がはじまっていくわけなのだが、
学校ではとんでもないDiscovery<発見>から
Change<変化>へとつながり、
すこしずつTrouble<騒動>を巻き起こしてゆくのであった。
……Is this Esthetic<耽美的>?
………or Erotic?
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