※第10話:Game(+Esthetic).8







 人目の及ばない、場所におりました。




 カポン――――――…

 ムードなんだか、なんなんだか。
 添水の音です。



 ふたりは、高級割烹の個室で、向かい合って座っていた。
 いちど人目にはついたが、確かにつかない場所へと及んではいた。


 そして片方はふんぞり返って、片方は肩をおとしてまでしょげ返っていた。
 若干、デジャヴあり。



「こんなとこはじめて来たんで、落ち着かないですよ〜。」
「あ?」

 ナナにとって、高級割烹は387歳にして生まれてはじめてだった。

「そのわりには、やたら落ち込んでんぞ?」

 ………………おおお(泣)


 などと言っていると、料理(いつの間にか薔が注文?をしたらしい)が運ばれてきてしまった。


「すごっ!なんだか高級そうで、食べられないんですけど!」
「なら、いっそ食っとけ。」

 ………た、確かに。


 ナナはまたしても387歳にして生まれてはじめて、懐石料理を食べた。

 パクッ


「おおお!おいしいのだかはよくわかりませんが、手はこんでますね!」
「あ?」

 (でもこのなんか、汁みたいなやつ、透き通ってるよ!やだよ!おまけに白っぽいのも、けっこうあるよ!)

 んーと………

 (あった!)

 ナナはかたわらにあった高級なお醤油を手にとり、


 ドバドバァ―――…

 とりあえず、かけまくった。





「お前、血圧上がるぞ?」
 目の前の薔はまだ、自身の料理には手をつけず、ナナが“たぶん醤油的な懐石料理”を生み出しているところを、落ち着き払って見ていた。

 しかしナナは、いつもによって美味しくいただいてしまった。


「美味いのか?」
「めちゃくちゃ美味しいですよ!」


「ふーん、」



 美味しそうに、食べるナナは、またしてもいきなり声をかけられた。


「おい、」

 …………………はい?












「お前、俺をバカにしてんだな?」

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