第9話:Game(+Fete).7
『第32回 夢現祭』
美術部の匠の手によって、オブジェのような看板がかかげられていた。
見ようによっては、個展を開いてもよいのではないかと思えるほどの、センスある看板だった。
バンバン――――…
そして花火はあがった。
近所迷惑にはならないのかな?と思われるほどの、盛大な花火だった。
第一日目はすでに、パフォーマンス・コンテストという、毎年恒例だが盛り上がりには欠けるときもあるイベントにさしかかっていた。
このパフォーマンス・コンテスト、通称パフォコンなのだが、イベント内容は、それぞれのクラスがひとつだけ出し物を持ち寄って、それに評価をつけてゆくものである。
間に合ったようですが、ナナたちのクラス「1年5組」の出し物がただいま、ステージ上で繰り広げられていた。
その内容とは?
「オ〜ウ、オ〜ウ、オウオ〜ウ!」
野球少年・黒熊くんが、ひたすらバットを振りながら「六甲おろし」を歌うというものであった。
よって、結果を報告しよう。
だれも見てはいなかった。
なぜこんなんになっちゃったかと言うと、ほかにやりたいと言うひとがだれもいなかっただけであって、黒熊くん自体はむしろ喜んでいた。
そのあとに行われた1年6組の、やたらとセクシーな女の子たちのホネホネ・ロックに魅了され、この時点で、いやもう出し物として決まったときからか、黒熊くんの「六甲おろし」は伝統ある六甲おろしに対してとても失礼なものになった。
そんなこんなんで出し物はつぎつぎと出されていったが、やはり盛り上がりについてはイマイチ欠けていた。
そんななか、
「キャ――――――ッ!」
女生徒たちの、ちょっとした黄色い歓声が巻き起こった。
「なんだろう…………?」
黒熊くんのときすでに眠気に襲われていたナナは、うるさくて顔をあげた。
するとステージに、ナルシストを絵に描いたようなひとが立っていたのだ。
「やぁ、みんな。ボクはこの学校で一番、いや、おそらくこの世界でかな?もっとも美しき人だよ。」
「キャ―――――――ッ!」
「だから、今はボクを、目を皿にしてまで、穴があくほど見つめればいいよ。」
「は――――――い!」
そのひとは、すこし、髪が長すぎて戸惑った。
そして、胸元に、“棘なきあかい薔薇”をさしていることが、ナナにはいちばん腹が立った。
「名乗らせてもらうと、ボクは3年6組の、林夏川 広志(はやしなつかわ ひろし)だよ。」
名字はやたら長いのに、名前は国民的で親しみやすくはあった。
「ちなみにボク、イケコンのほうにエントリーしてるから、みんな投票してね。まぁ、こんなこと言わなくても、圧倒的にトップだろうけど。」
「は――――――い!!」
「それからボク、美しすぎて彼女いないから、この機会に受け付けたいと思っ」
「あ〜、キミ。」
「………………はい?」
司会者までつとめていた、校長先生は言った。
「5分経ったから、戻ってくれるかなぁ〜?」
※出し物に与えられた時間は、5分間だけだった。
「校長先生、妬かないでくださいよ〜。」
と、投げキッスをして戻っていった広志のキッスを、校長先生は軽く無視した。
この広志先輩のパフォーマンス中、1年5組のメンバー(たったひとりを除いてね)は、やたらと腹をたてていた。
むしろ、スプラッタ劇場のが、マシだったとすら思えていた。
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