素直じゃないね いつの間にか一緒にいた存在。だからこそ離れていくことなんてないと思っていたし、これからもそんなことはないと思っていた。だから、浮気とか喧嘩とかそういうことしても納豆が俺から離れる可能性なんてないと過信していた。だけどなぜだろう。彼女は今俺の目の前で無表情で別れようと言った。いざ言われてみると、焦燥感だけが俺を襲った。 「…は、なんでっスか。」 『涼太よりも好きな人ができた、って言ったら納得してくれる?』 「俺、よりも…?」 俺よりも、ってどういうこと?頭ではその意味を理解できる。だけど心がそれを理解したくないと拒む。 『浮気、してたの。涼太が浮気してるの知ってたから、その腹いせに。…多分、涼太はきづいてなかったと思うけど。』 だって私のことについて無関心だもんね、彼女は自嘲的な笑みを浮かべた。その言葉に俺は何も言うことができない。そんなことはない、と否定したかったけど納豆のことを知らないのは事実だと思ったから。 「俺、ごめ…っ」 『別に涼太を責めてるわけじゃないよ。現に私だって浮気してたんだし。誰が悪いとか、ないんだよ。みんながみんな、自分のやりたいように動いただけ。だから、さ、終わりにしよう?』 愛してたよ、彼女はそう言ってにっこりと微笑んだ。ああ、彼女の頭の中では後悔とかないんだな、と思った。 「(―――…俺は今でも愛してるよ。)」 なんて、今更気づいても遅いけど。 素直じゃないね (何もかもが遅すぎる、彼女を引き止めようとした手は何も掴むことなく下ろされた。) title//絶頂 2012*09*28 [しおり/戻る] ×
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