抱きしめてくれなきゃ死んじゃう、だけど抱きしめられても死んじゃうの。 痣になった右腕を見せればわかりやすく顔を歪められた。包帯できついくらいに腕をぐるぐる巻きにされる。ひどいな、と言う大輝の呟きに苦笑いを浮かべた。 『今回は本当に殺されるかと思った。』 「今度は何やらかしたんだよ。」 『友達と喋ってたところ見られた。』 馬鹿、と言われて頭をくしゃくしゃと撫でられる。傷つくのはお前だろ、という言葉に心配されてるなあ、と実感して何も言えなくなる。 『でも、きっとさ、私が死んだら間違ったことしてたって気づいてくれると思うんだよね。だからあのとき、一瞬でも死んでもいいかなあ、と思った。』 「もっと自分の命大切にしろよ。」 きつく抱き締められてしまって大輝がどんな表情をしているのか見えない。こんな私を馬鹿だと思っているのか、哀れんでいるのか。だけど抱き締めてくれる腕があまりにもあたたかくて、優しくて鼻の奥がつーん、と痛んだ。その痛みを彼から受けた痛みよりも痛いと感じてしまった。 『愛してる、って言ってくれたのにね。どんどん一緒にいるのがつらくなっていくの。愛してるって言うのは簡単なのに、愛って難しいね。』 「…俺がさらってやろうか、納豆を。」 『大輝も殺されちゃうかもしれないよ?』 「お前をまもって死ぬんだったら本望だろ。」 『…もっと自分の命大切にしなよ。』 馬鹿、そう言った私の声は震えていた。大輝がさらってくれる、と言ってくれることをどこかで心待ちにしていた私に自嘲の笑みが零れた。 抱きしめてくれなきゃ死んじゃう、だけど抱きしめられても死んじゃうの。 (連れ去ってよ、誰もいない2人だけの世界へ。) title//tiny 2013*03*07 [しおり/戻る] ×
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