君を愛しすぎてしまった。 帰ろ、と言って左手を拐われる。私の歩くスピードに合わせて歩いてくれる由孝を見ると、流石女好きだけあると思う。内面を見ると残念だけれど。 『わざわざ迎えに来てくれなくても良かったのに。』 「俺がしたかったんだからいいんだよ。」 『部活も大変でしょ?』 「心配してくれてるの?」 納豆は優しいな、と言ってくつくつと笑う由孝の左肩を軽く叩く。いわゆる、私なりの照れ隠し。痛い痛い、とおどけて由孝は笑った。 『別に、心配なんてしてない。』 「そういうことにしておくよ。俺が納豆のことが心配でやってることだから納豆は気にしなくてもいいよ。」 『心配?』 「たとえば、俺以外の男に目移りしないかな、とか。心配してるんだよ。」 『そんなこと、ないのに。…由孝の方が他の女の子にふらふらしないか心配だな。』 由孝が生粋の女好きなのは周知のことだから。それは仕方のないことだと、今では私自身諦めてしまっているのだけど。 「そうだな、可愛い女の子はいっぱいいるよ。」 『ほら、やっぱり危ないなー。』 「だけどその女の子達の中でも一番可愛い女の子を見つけちゃったからね。他の女の子を見ることはあっても、最後にはちゃんとその女の子のところに帰って来るよ。その女の子は自分がそこまで大事にされている、って気づいてないみたいだけど。」 ちらっ、と由孝の視線が私に向く。その眼差しに、私はもう顔を赤くして俯くことしかできなかった。 君を愛しすぎてしまった。 (敵わないなあ、と繋がれた手をぎゅっと握った。) title//tiny 2013*03*02 [しおり/戻る] ×
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