泣きそうなほどにいい天気だと思った日 どうすればいいかなんてわからなかった。納豆は俺以外の奴にどっぷりはまりこんで。でもそいつにはちゃんとした彼女がいて。俺だって納豆のこと好きなんだぜ?ずっとずっと、見ていた、のに。納豆は泣くんだ。あいつが好きだと言って泣く。どうしても諦めきれないと言って泣く。あいつと彼女が一緒にいるのを見て泣く。恋は盲目とはよく言ったもんだと思う。 昇降口で立ち止まっている納豆を見つけて何をしているんだろうと思い静かに近寄った。納豆はそこから動けなくなってしまったかのようにただただ黙って立っていた。きっと俺が後ろにいることには気づいてないんだろうな。納豆はあいつのことを目で追って、俺のことなんか視界にも入れないから。 「遅くなってごめん。」 「もう、遅いよ。」 「ごめんごめん。職員室寄ってたら遅くなっちゃってさ。」 自然と繋がれた手を見て、納豆は泣く。どんどん遠くなっていく背中を見て、納豆はそれでも今もなおあいつのことを思っているのか。 黙って声を押し殺しながら泣く納豆に胸が締めつけられて後ろから抱き締めるように両手で目隠しをした。あいつなんて見るなよ、そういう気持ちを込めて。 『かず、なり?』 「あんな奴見るなよ。そんなに泣くほどつらいんだったらあいつのこと想うのなんてやめちまえ。」 『うん…、うん、ほんとにそうだね。だけど簡単に諦められないよ…。』 俺の手が##name##の涙で濡れる。それに気づいた納豆は慌てたように俺の腕の中で身をよじった。 『和成、手がよごれちゃう。はなして…?』 「はなさねえよ。」 『和成、』 「あんな奴を想って泣くなよ…っ!」 なあ、俺はこの想いをどうしたらいいんだよ。そんなこと、誰も教えてくれるわけねえよな。この行き場のない俺の想いは、どうしたらいいのか。 「早くあんな奴忘れちまえよ、」 そんなに簡単なことじゃないってわかってる。だけどそう言わずにはいられなかった。納豆は自嘲したように笑ってから、それができたらどんなに楽だろうね、と小さく呟いた。 『だけど、今だけは泣かせてよ。』 これで泣くのは最後にするから、と言って静かに涙を流す。だけど今だけなんて、それはきっと嘘だ。納豆がそんなに簡単にあいつを忘れられないことを俺は知っている。また明日になっても、明後日になっても、明々後日になっても、納豆はあいつを想って泣くだろう。 嗚呼、俺も納豆も報われねえな、そう心の中で呟いて空を仰いだ。 泣きそうなほどにいい天気だと思った日 (憎らしいほどに太陽が輝いている) 企画サイト『黄昏』様にて第4Q『嘘をついて、嘘を重ねて』に提出 2013*02*01 [しおり/戻る] ×
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