角名



「ちょ…っと待って…!」
「………何、」

不機嫌そうな声を出す倫くんに怯みそうになるけれど、ここで引き下がるとあっという間に彼のペースに持っていかれる事を、私は知っている。

「ちゅーしたくねぇの?」
「したくねぇことはないけど…!」

じゃあ良いじゃん、と再び私の後頭部を掴んで引き寄せる倫くんの口を私の手で塞ぐと、むっと眉間にシワを寄せられた。

「ちゅーする前にピアスとって!」
「えぇ…めんど…」

私の手の下でもごもごとこぼした倫くんは、口を塞いだままの私の手をべろりと舐める。
驚いて引っ込めようとした手はぱしりと捕まえられて、によりと目を細めた倫くんはそのまま指1本ずつに舌を這わせる。
ただでさえ、柔らかくてぬるりとした感触に身体が跳ねるのに、時々シルバーのピアスが指先を擽ってぞわりと背中が震える。これを着けたままちゅーをされると、ゾクゾクしてドキドキしていつも頭の中がいっぱいいっぱいになるから、ピアスを外してからにしてってお願いするのに、倫くんは全然聞いてくれない。


「も、倫くんはなっ…!」
「やだ」

…やられた。離してって手を無理矢理外そうとしたら、両手首とも片手で捕まえられた。そのまま唇に噛みつかれて、倫くんの舌が口内に入ってくる。
舌を擦り合わせて、上顎を撫でて、柔らかい舌が触れる合間にピアスが悪戯に口内を引っ掻くから、ほら、背中がずっとゾクゾクしてる。

「……っは、」
「…はは、良いカオ、」

その顔好きなんだよね。って耳元で囁くから、もう私に勝ち目なんてない。








イラストの御礼



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