01.僕は只、楽しい事をしたいだけ



人でごった返す立海大付属高等学校の掲示板前。掲示板を見て穏やかな気持ちで過ごす、なんて可愛い感情は持ち合わせてなくて。桜吹雪を見つつ人ごみを掻き分けやっとの思いで一番前まで来る。なかなかにクラス数が多い為自分の名前を発見するのに時間を要すると思ったが一番始めのクラス、A組に私の名前藤木七海≠ニいう文字を発見する。まだ発見していないのか横にいるばりばり校則違反の赤髪と銀髪に目を向ける。

「うっわA組!ねえA組!お前らは?まぁ私と離れたからって寂しがるなよ!」
「あ、俺A組だ」
「奇遇じゃな、俺も」
「嘘だろおおおおおお」

誰だよこれ決めたの!!問題児2人そろってるのかよ!!!叫ぶ私にお前も同類だろと突っ込む2人。そんな突っ込みなんて無視だ! てっきり私は離れちゃったね、ちょっぴり寂しいね。なんて会話をして新しいクラスにドキドキしながら行く予定だったのに。なんてことをしてくれる。それよりも問題児が2人揃ってるのが問題だ。

私と仁王と丸井はなんだかんだで腐れ縁というものである。私が中学2年の時に転校して、ひょんな事から仲良くなってそれからなんとなく一緒にいるようになった。波長が合うっていうのかな?
そっからはもう毎日学校が楽しくて楽しくて。授業をさぼって外で水鉄砲で遊んだり、停学ギリギリのイタズラしたり。あ、停学くらった事もあったわ。幸村と真田にめちゃくちゃ怒られたっけ。でもこいつらと出会ってなきゃ確実に廃人になってた。皆真面目なんだもん。

「なんだよ藤木にやにやして」
「残念な顔が崩壊しとるぞ」
「おう仁王お前の顔も崩してやるよ。グーがいいかパーがいいか」
「チョキで」
「チョキは目潰しだああ」

容赦なく貶されたので手をチョキの形にして仁王の目を狙う。うわ、ちょ、やめんしゃい!なんて言って持ち前の反射神経で避けやがる。さすがテニス部。反射神経よすぎ。それを見て笑う丸井の腹にもグーパンお見舞いしておいた。みぞおちにヒットしたらしくうずくまる丸井。こいつは反射神経悪いな。そんな丸井を無視して教室へ向かう。お前らいつの間に和解してんだよ!と叫んでいたがその後タイミング悪く来た真田にしゃがみこむな叫ぶなと怒られていた。ざまあ。








教室につくとこのクラスのほとんどの生徒が来ていた。まだ少し早い時間というのに。真面目ちゃんばかりか。教室に入ると同時に違和感を感じる。何だ?

「お、丸井じゃん!」
「仁王君もよろしくー」

なんて次々と声をかけられる2人。あ、分かった違和感の正体。

「いつもの女子のキャーキャー言う声援がない!!」

私が叫ぶと静まりかえる教室。そうだ、これだ。いつもなら仁王や丸井が入ったら女の子達がキャーキャー騒いだりしてるのに。皆ナチュラルに話しかけているのだ。2人に何言ってんだこいつ、みたいな顔されているがこの際無視。クラスの1人の女子が笑いながら口を開く。

「それって熱狂的なファン達でしょー?」
「このクラスには熱狂的なのはいないよ!」
「もちろん、ファンには変わりないけど。その前に友達だから普通に喋りかけるよー」

と、次々に話して来る。え、そうなの??と丸井や仁王を見るとお前女子と関わらなすぎなんだよ。と言ってきた。仕方ないじゃないか。今まで私に寄って来る女子って丸井や仁王目当てに近づいて来る人ばっかりだったし。私と仲良くなって2人に近づこうという魂胆だろう。それが中等部の頃から続いたのでもう面倒くさくなって女子とはあまり関わらなくなったのだ。女子のあーいうの怖い。
なんだかんだいいクラスっぽそうだなと思い指定された席にはつかずにとりあえず2人の近くの席に腰掛けた。朝からずっと噛んでいるはずなのに更にもう1つガムを食べ始める丸井。寄越せと言ったら断られたちくしょう。でも何で私達は同じクラスになれたのだろう。去年も騒ぎまくってたので私達をブラックリストに入れている教師は多いはず。それなのに。そんな事を考えていると目の前でお菓子争奪戦が始まる。主に仁王のを丸井が奪おうとしているだけだけど。あ、お菓子取られた。丸井の食べ物への執念凄い。まぁ何はともあれ。

「仁王ー丸井ー」
「なんだよ」
「なんじゃー」



「また一年楽しくなりそーだねっ」


へらへら笑ってみせるとつられて笑う2人。

私は君達2人と一緒のクラスになれて心底嬉しいのだよ!








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