それから三ヶ月が経ち、ツナの家政夫の仕事が更新時期を迎える。
その日ツナは協会に行って、更新希望の手続きをしてくるつもりだった。
しかしなぜか雲雀は朝からツナを離そうとしない。
「大丈夫ですよ?俺まだ雲雀さんのとこで続けたいし・・・雲雀さんが望んでくれるならまたここで働けるようにしてきますから・・・」
それでもまだ不安そうにしていたが、何とかなだめて家を出た。
(なんだろう・・・まあ、あんなに必要としてもらえたら、悪い気はしないけど)
協会に着くと一枚の紙を渡された。そこに書かれた住所をたどると、一軒の弁護士事務所に着いた。
通された部屋には黒いスーツの男が居り、雲雀と彼の亡くなった主人との契約を担当した弁護士だと名乗った。
彼はツナに、雲雀の家で働く契約の解除と、このまま雲雀の元には戻らず、後日業者から荷物だけを受け取ることを要求した。
ツナが拒否すると、事務所のあるビルの一室に監禁された。
「みんな、三ヶ月で交代してもらっているんですよ。あれが、他の人間に心を動かされることのない様にね」

一方、いつまでも帰ってこないツナに不安を感じた雲雀は、行方を捜し始める。
今までの家政婦たちはみな帰らず、数日後荷物だけが運び出されることになる。それは彼にとってたいしたことではなかったが、今回ばかりは焦りを隠せなかった。
協会から無理やり居場所を突き止め、弁護士事務所に乗り込む。
ツナを部屋から連れ出す雲雀に、不敵な笑いを浮かべて弁護士は言う。
「はじめてですねえ・・・君が連れ戻しに来るなんて」

道中一切口を開かずツナの手を引いていた雲雀は、屋敷に入るなりツナを強く抱きしめた。
「君がいなくなるかと思って、とても、不安だった」
そういってゆっくりと、ツナの唇にキスを落とす。
予想もしなかった行為にただ呆然としているツナに、雲雀はもう一度唇を押し当て、今度は少し長めに、口腔を犯した。
「・・・なんで・・・?」
それしか口にすることができないツナに、ちょっと困ったような顔をしながら、
「君の気持ちは、僕の気持ちとは、違うの?」
と尋ねる。
そのいつもとは違う子供っぽい表情を見ながら、ツナは自分の雲雀への思いに名前がつけられた気がして、その肩に手を伸ばした。
「違わないと・・・思います。」

二人で迎える初めての朝、少し遅めの朝食の席で、雲雀は弁護士に、自分の主人との契約を破棄してもらえるよう、頼みに行くつもりだと告げた。
「彼女の遺産も放棄するつもりだから、僕無一文になるけど・・・いい?」
少し不安そうに尋ねる雲雀に、ツナは身を乗り出して叫ぶ。
「俺、家事くらいしかできないけど、いっぱい働いて稼ぎます!」
その言葉に、雲雀は笑って答える。
「僕機械だから、こう見えても力はあるんだ。土木工事でも何でもできるよ」
「・・・ひばりさんの土木工事姿って、想像できない・・・」
「夜の仕事のほうが良い?」
「ダメです!!」
必死でしがみつく姿を見て、くくと笑い、ツナの耳元で囁く。
「そうだね。夜はもう、君で手一杯になるからね・・・」
頬を真っ赤に染めるツナに満足げな笑みを浮かべると、雲雀は席を立った。戻ってきた彼の手には、プランターのシロツメクサが二輪、やんわりと握られていた。
雲雀に言われてツナが左手を出すと、薬指にその一輪を結びつけられた。
「残念ながら、この家にあるものは全て、主人のものなんだ。僕のものは、これだけ」
ツナはもう一輪を、雲雀の同じ指に結び、
「お揃いですね」
と微笑んだ。
雲雀はそんな彼を抱きしめ、
「一生、側にいるから」と誓った。


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