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朝じりじりと鳴り響く目覚ましをおとなしくさせて、次に目覚めたのは始業時間五分前。
遅刻確定だ。
さすがに諦めモードでのろのろと支度をし、横で口を尖らせている母さんの小言を聞きながら朝食を済ませて家を出た。
ああもう、また目立っちゃう・・・学校行きたくな
「おはよう」
小道に出たところで、聞き覚えのある甘い声に呼び止められた。
恐る恐る振り返れば、黒ずくめの風紀委員長が立っていた。
「重役出勤かい?」
「ヒ、ヒバリさん・・・」
彼の姿を見た途端無意識に髪を押さえていた。
莫迦だ俺。遅刻云々よりも、寝癖が気になってる。
だってほら、やっぱ憧れの人な訳だし・・・て言うかその前によれたネクタイとかズボンからはみ出たシャツとか気にしろって!
あわてて服を調える俺を、ヒバリさんはじっと見ていたかと思うと、急にふっと視線を逸らした。
「咬み殺されるのと罰掃除と、どっちがいい?」
「・・・罰掃除でお願いします」
見逃してくれるわけ、ないよなあ。鬼の風紀委員長だし。
俺がネクタイを直すと、ヒバリさんはくるりと背を向けて歩き出した。
俺も慌てて、彼の隣を半歩遅れてついて行く。
「・・・昨日、あんなに夜更かしするからだよ」
「え?」
ヒバリさんはそれきり黙ってしまった。
確かに昨日は眠れなくて、ずっと枕を抱えてベッドの上をゴロゴロしていた。何でヒバリさん、知っているんだろう?
ちら、と横目でヒバリさんの顔を盗み見る。颯爽と歩くその横顔に惹きつけられる。
とん、と右手に何かが当たって見下ろせば、俺の手の隣にヒバリさんの手。
俺のより一回り大きい・・・いや、指が長いんだ。少し骨ばった手。
こんなに近くにあるなんて、初めてだ。

・・・繋ぎたい、な・・・。

ふと浮かんできた欲求を、ぶんぶんと首を振りながら慌てて打ち消す。
うわ、なんか俺、すごい今女の子みたいなこと考えなかった!?
もう一度そっと上目遣いに見上げれば、そこには端正な無表情。ひどくストイックな感じがして近寄りがたい。
途端に自分の考えてることが恥ずかしくなって俯いた。
「・・・何百面相してるの。着いたよ」
声をかけられて初めて、学校に着いたことに気が付いた。う。また間抜けな所を・・・。
「すみません・・・じゃ俺、教室に」
いきます、と言おうとして顔を上げると、あった。

すぐ近くに。ヒバリさんの顔。

「う、うえええ!?」
びっくりして思わず押し退けてしまった。
びっくりしたびっくりしたびっくりしたああ!
だって心の準備もなく・・・いや、心の準備ってなんだよ!!
「・・・これ」
ヒバリさんは俺の行動に驚いた様子もなく、何かを摘んで差し出した。葉っぱ?
「髪に、ついてた」
「・・・・・・・・・」
一瞬の沈黙の後、かああっと頭に血が上っていった。
うわ俺、何勘違いしてんの!?自意識過剰だって俺!

「じゃあね」

ヒバリさんは恥ずかしさに穴があったら入りたい状態の俺を背に、校舎に向かって歩いていってしまった。
俺は暫く、立ち直れずにその場に立ち尽くしていた。

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