「風紀委員の秘密のお仕事」
     「おれの守護獣さま」番外編     

   文/紫苑琉斗・絵/しらいし



委員長が一人の男子生徒を気にかけている。

それに気がついたのは、いったい何時だったろうか。


今日も委員長は応接室の窓から外を眺めていた。
折りしも校庭では、2年の体育の授業が始まったところだ。
その中に埋もれている一人を、彼は食い入るように見つめている。

「委員長、会議の資料が揃いました」
「うん。」
「こちらの案件のほうは急がせていますが、もう少しかかるということです」
「うん。」
「それで明後日の協議会の件ですが・・・」

次々と告げられる報告に、彼は「うん。」と気の無い返事をしつつ、意識は窓の外へ集中している。
これはここ最近のいつものことだ。

そして、これがまったくの無自覚なのだ。

一度、「外に何か気になるものがございましたか?」と尋ねたことがあるのだが、
「・・・・・・?別になにも。」
と、びっくりしたような顔をして、不思議そうに何度も瞬きを繰り返していた。


「・・・・・・というわけですが、如何いたしましょう」
「それは僕が直接手を下す。草壁、もう下がっていいよ」
「了解しました」
いかにも聞いていないようなのに、要所はしっかり押さえているところが委員長の怖いところだ。

「・・・あ、転んだ。」
それは何気なく呟かれた独り言だった。
多分委員長自身も、呟いたことに気づいてないのではないだろうか。

ちらりと窓の外を盗み見すれば、案の定、2年の男子生徒――沢田綱吉――が倒れていた。どうも膝をすりむいた様子だ。
今までのパターンからいくと、この後、委員長は「ちょっと見回り」などと言い放ち、さも偶然を装って彼の元へと出向いていく。
保健室へと向かう少年を拉致しては引き摺って歩く委員長を、実は結構な頻度で見かけている。
そのあと委員長自ら手当てしてやったり、時には応接室に連れ込んだりしているようだ。


沢田という少年は、どうも成分の半分以上がドンくささで出来ているらしい。

何も無いところでこける。
階段から足を踏み外す。
黒ずくめの赤ん坊に殴られる。
道の側溝にはまる。
財布を忘れて買い物にでかける。
マンホールに落ちる。
猫に顔中舐め回される。
黒ずくめの赤ん坊に蹴りをいれられる。
縦笛が盗まれる。
上履きも盗まれる。
使用済みの水泳ぱんつが盗まれたときは風紀委員総出で捜索させられた。


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