■九月二十九日


昼休み応接室を訪れたのは、いつも犬のように沢田の後を付いて廻っているあの銀髪の男であった。
「お前、十代目の事をどう考えてやがるんだ」
部屋に入るなり僕を睨み付けそう言った彼は、明らかに敵対心を燃やしていた。
こいつも、あの手紙の奴らと同類か。
「草壁が言った通りだよ。あの子は僕のものだ。文句があるなら決闘でもしようか。僕の前に顔を見せたその心意気に免じて、受けてやってもいいけど?」
「そういう事言ってんじゃねえ!」
笑みを浮かべながらトンファーをちらつかせた僕に、群れる事しか出来ない草食動物が一喝した。
「・・・と言うか、いや・・・てめえが十代目をもて遊ぶってんなら、決闘でも何でも申し込んでやる。けど・・・」
銀髪はぐっと拳を握ったまま、下を向いている。
「応接室に通い出してからというもの・・・すげえ、幸せそうなんだよ・・・」
俯いたままの彼が、肩を震わせているのが分かる。僕は暫くの間その姿を黙って見ていたが、やがて構えていたトンファーを下ろした。
正直、彼の存在はムカつく。恐らく彼は手紙の奴らとは違うのだろう。その事が、余計にムカつくのだ。
そして、本当の意味で彼が沢田の味方であろう事も。
「泣かしたら、ただじゃすまさねえからな」
そう言い残し、静かに応接室を出て行った。
僕が彼を追いかけなかったのは、ただ単に、戦闘意欲を失ったから。
それだけだ。





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