■九月二十六日


仕事中、ふと窓の外に目をやると、グラウンドの手前のほうで沢田のクラスが準備運動をしているのが見えた。
足を投げ出して地面に座り、後ろから同級生に背中を押されている。
体が硬いらしく、足のつま先まで指が届かず苦戦していた。
その必死な様子に思わず吹き出しそうになり・・・はっとした。
沢田の背中を押していた男子生徒がなんだか不自然な動きをとったのだ。同級生達に背を向けているので誰も気付かないのだろう。力を込めて押している様な振りはしているが、実際上から見れば、あの子の首筋に顔を近づけ右手が太ももの下をまさぐっているのがはっきりと分かる。
僕は椅子を蹴飛ばして立ち上がると、物凄い勢いでグラウンドに向かった。
涙を浮かべながら、必死に同級生の悪戯から逃れようと身を捩っている沢田の姿が浮かび、かっとなる。
あの子に触っていいのは僕だけなのだ。

グラウンドに駆け込むと、みんなの視線が一斉に僕の方に集まった。
沢田と組んでいた奴をぎっと睨みつけると、彼は慌ててその手を後ろに隠した。どんな風に料理してやろうかと考えながら、トンファーを取り出そうとすると、
「ヒバリさん、どうしたんですか?」
と惚けた様な声がして視線を移した。
被害者である筈の沢田は、全く平気な顔をしている。
と、いうか、

・・・気付いてない・・・?

純粋そのものと言う瞳にじっと見上げられて、悪い事をしている訳ではないのに何故か気まずくなり目を逸らした。
「・・・なんでもない」
僕は身を翻し彼に背を向けると、2ーA男子の視線を浴びながらすごすごと校舎に戻っていった。




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