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「未来っ、てめ! いつも窓から入ってくんなっつってるだろ!!」
「だってこっちのが近道なんだもん。わざわざ鍵とかめんどくさい」
「危ねぇだろが!!」
「うっわ、何? 隼人にぃわざわざ僕の心配してくれてるの? 感激ー」
「うぜぇ黙れ、てめぇ果てろ!!!」


窓を挟んで大声で喧嘩しあう二人。ちなみに、二人の辞書の中に、近所迷惑という言葉などまっさらない。
しばらくして言い争いが終わったのか、未来は再び窓から自分の部屋に飛び移る。そして祖を見送った獄寺はピシャリ、と音を立てて窓を閉めた。

そして、そのままそばにある椅子に腰かける。
ため息交じりに体制を崩し、銀色の髪を掻き上げた。


「ったく……んであいつはあーも可愛くねぇかな……性格もうちょっと違ければいいのによー……」
「じゃあ、変えてみるか?」
「誰だ!?」


さっきまで気配がまるでなかったのに、いきなり声がしたことに驚き、獄寺は殺気を出しながらその声がした方を向いた。
だがそこにいたのは刺客などではなく……


「り、リボーンさん!?」
「ついこないだ、新しい弾が手に入ったんだ。名付けて、「性格変更弾」だ。詳しいことはまだ分からねぇが、使ってみる価値はあるぞ」


獄寺はリボーンに差し出された弾をまじまじと見つめる。
それは死ぬ気弾のそれと酷似していて、だけどどことなく少し違うようだった。

性格変更弾となると、おそらく効力は名前通り性格を変える……。
だが、どう変わるのか、獄寺にはさっぱり分からなかった。


「こ……この効果は……いつまでもつんスか?」
「せいぜい1〜2時間程度だ」


獄寺は弾を握りしめ、喉を鳴らす。
その後ろで……リボーンが妖しげに笑っていたのにも気付かずに……。



「あー……眠い……」

何も知らずにのんきに欠伸をする未来。
ついに登校時間となり、二人は綱吉達を迎えに行ってから学校に向かう途中だった。


「……お前が変わる、か……」
「ん? なんか言った? 隼人……」
「べ、別になんも言ってねぇよ!!」


それでもちらちらと未来を覗き見る獄寺の様子を、未来は不審そうに首を傾げた。
ついに5人の足は、学校に辿り着く。


(そろそろ、リボーンさんが銃を放つ時間だ……)


腕時計を確認した後、獄寺はよそよそしく歩き続ける。
その様子に気付くものは誰もおらず、一同がおしゃべりをしたり欠伸をしたりと各々教室までの道のりを歩んでいた。
獄寺はあたりをチェックし、緊張を高まらせる。


(そろそろ……そろそろ、だ……)


ついに教室にたどり着く。
いつも通り遅刻ギリギリの時間帯に教室にたどり着いた5人は、相変わらず喋りながら自分らの席に着いた。
鞄を置き、未来が教室に腰かけたその時……、

なぜか開いていた窓から、銃独特の銃声音が響き渡る。
そしてその銃から発砲された弾は、少しも逸れず真っ直ぐに未来のこめかみに命中する。
突然すぎるその襲撃に対応できず、未来はそのまま机に突っ伏し動かなくなった。


「お……おい、未来……?」


少し揺さぶってみるが、未来が起きる様子はない。
ぴくりとも動かないところを見て、ようやく獄寺は焦り始めた。
血は出ていないものの、もしかしたらとても危険なものだったのかもしれない。
いや、だがリボーンがそんなことをするだろうか?

そしてようやく、未来の……だが、地を這うような低い声が聞こえた。


「やめなよ……揺さぶるの。咬み殺すよ?」


ゆっくりと未来が顔を上げる。
不快そうに寄せられた眉根。
指に光るボンゴレリングが、紫色の炎を灯した。

聞き慣れた口癖に、炎の色。


「ま……まさか……!?」


獄寺にとってもそれは予想外だったのだろう。
まさか「こういう方法」で未来の性格が変わるだなんて。
そう……今まさに、未来は雲雀恭弥の性格になっているのだ……。

(き……聞いてませんよ、リボーンさん……?!)

未来はそのままめんどくさそうに体を起こし、髪をかきあげた。


「……ど、どういうこと……? なんで未来が……」


未来のすぐ隣で慌てている未来の大親友こと、北国 雪は未来の様子を見て驚いたように目を見開いている。
現状が呑み込めないのも、無理はないだろう。


「ってか……リングに紫色の炎が……ひ、雲雀さん!?」
「ん? 何だ?」


慌てている綱吉と、同じく状況を理解できていない山本。
ぞくぞくと未来の周りにいつものメンバーが集まり始めた。
それを見て、未来はさらに不快そうに顔を顰めた。


「ねぇ……君たち、群れないでくれる?」


鋭い眼光で睨みつけながら、未来が言う。
やはりそれも雲雀の常套句。
これで疑いなく、未来は雲雀の性格になっていることが実証された。


「ひ、ひいいぃぃ、す、すいませんでしたぁぁぁ!!!」


思わず雲雀を連想してしまい、あまりに強い眼光に綱吉は青ざめる。
雪は相変わらず状況を読み込めていないように開いた口が塞げていないし、山本はいつもの笑みも消して困ったように頬を掻いている。

そして首謀者の一人である獄寺は、そんな様子を数歩離れた様子から見ていた。


(……これで後1〜2時間……か……?)


ごくりと獄寺は喉を鳴らす。
既にいつもの未来の性格で手を焼いているのだ。
悪化した今、効果が切れるまで待つほか、どうする術もない。


(絶対ェ、無理だ……)


だが、獄寺は知らずにいた。
本当に恐ろしいのは、これだけではないことを……。

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