5

相変わらず着々と進んでいくキャラチェンジに、もう雪たちはため息つかざるをえなくなった。

更衣室で着替えていると、早速未来のリングから炎が消え、未来は壮大に頭を壁にぶつける。
ぶつけた格好のままずるずると床に倒れ、そのままうつぶせになる。
ちゃんと呼吸出来ているかと雪が確認しようとしたところ、唐突に未来のリングに炎がともる。
その色は、赤。

雪は再び大きなため息をついた。


「……ちっ……かったりぃ」


乱暴な口調と絶え間ない舌打ち。
眉根には深く皺が刻まれ、不機嫌さを醸し出していた。
教室に戻った未来は、早速自分の席の机の上に両足を乗せる。


「……獄寺……」


雪は笑顔のまま獄寺の首を絞める。
徐々に力を入れていけば、次第に獄寺は青ざめていく。
だが今は、未来が自分の性格だという事実にショックを受けているので何も反抗できないでいた。


「おおおお、落ち着いて、雪! 強いて言うなら、不可抗力だよ!」
「綱吉! どうかなさいましたか?」


悲鳴をあげる綱吉に目敏く声をかけたのは、獄寺……ではなく未来だ。
まさかの敬語という事実に、綱吉の腕に鳥肌が立つ。
勿論、気味悪さへの悲鳴も忘れない。


「ひいぃい!」
「……なんか、未来に犬耳と犬の尻尾が見えるんだけど」
「テメェ未来こら! 10代目の右腕の座は譲らねぇぞ!」


わふわふ、とまるでご主人様におねだりする犬のように、綱吉を見つめる未来。
綱吉は悲鳴をあげ後ずさりし、雪はなんとなく可愛いかも、などと思考を泳がせ、
そして獄寺はなんと未来に喧嘩を売りだす始末だ。
ちなみに山本は、展開についていけず固まっている。


「んだと隼人! テメェが一番綱吉困らせてるくせに何が右腕だ! 右腕の座は僕が貰う!」
「あぁ!? っつか迷惑かけてんのはテメェも同じだろうが!」
「迷惑かけてる自覚あるんだ。それより、今すぐ女の子らしくなってよ、獄寺」
「いや、俺が今女の子らしくなっても意味ないだろ!? どーせデータはすでにインプットされてて変えられねぇよ!」


かたや未来と、かたや雪と言い争う獄寺は大忙しだ。
そもそも事の発端を考えれば、それも当然の報いなのかもしれない。

そこへ、教室のごみ箱に扮したリボーンが回転しながら現れる。
勿論綱吉はそれについてのツッコミを忘れなかった。


「いや、データは炎を通じてインプットされてるからな。今獄寺が女の子らしくなれば、未来もその通りになるぞ」
「ッ……!!」


青ざめたまま動けなくなる獄寺。
今の彼の中では、彼のプライドと義妹の口調の二つが天秤にかかり、ぐらぐらと左右に激しく揺れていた。
さらにそれに追い打ちをかけるように、雪は優しく獄寺の肩を叩く。
彼女の表面上の笑みだけで、彼を追い詰めるのには十分だった。


「リボーンさん、そんなこと言わなくていいッス!」
「ちょっとした余興だぞ。そっちのほうが面白いだろ」
「でも俺はお断りッス。隼人が女々しい姿なんて誰も見たくねー」
「喧嘩売ってんのかテメェ!」
「あぁ? んじゃあテメェはやりたいってのかよ!」


再び騒ぎ出す二人。
あまりに煩く叫ぶので、雪たちは耳を塞ぎだす始末だ。
今は休み時間だからいいとして、それでもクラスのみんなにはいい迷惑じゃないだろうか。


「大体テメェはいつもいつも自分に酔い――……」


そう雪が思った途端に、未来の言葉が止まる。
それに気付き振り返ると同時に、未来の体は勢いよく机に向かって崩れ落ちた。


「……み、未来!?」
「あれ? キャラチェンジ!? いつもより早くない……!?」
「このままだとうるせーからな、俺が終わらせておいた」
「そんなことできるんスか!?」
「威力や効果を変えることはできねーが、時間短縮ならちょっとの細工で出来るぞ」


それなら何故骸の時、短縮してくれなかったのだろうかと4人は真摯に思う。
だけどそこは腹黒なリボーンのことだ。
きっとどこか遠くから未来の様子を見て至極心底楽しんでいたに違いない。

そんな5人をよそに、まるで今起きたかのように未来は机から起き上がった。
そして数度ぱちぱちと瞬きをしてから教室の中を見渡す。
そしてその視線が、4人とリボーンに止まる。
優しい笑みを浮かべた未来は、こう口にした。


「あれ? 雪たち、どーしたの? そんな暗い顔しちゃって……」


見覚えのある笑み。
優しげな口調と声。
それがいったいだれか、真っ先に気付いたのが綱吉だった。


「……雪だ!」


……未来の指輪には白い炎がともっていた。

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