3

二時限目も終わりに差し掛かるところ……
綱吉たちは明らかに目で見えてるほど疲れ、やつれていた。

そんなことに気づきもしない未来は、ただ黙々と自分の本を読んでいる。
……ちなみに、今は授業真っ最中だということは、誰もツッコまないらしい。


「この主人公、馬鹿ですねぇ。悩むより早く殺してしまえばいいものを……」
「ねぇ、未来。お願いだから黙って。未来のイメージが崩れてく」
「……君までそんなこと言うんですか? 雪……」


まったく……、とため息をつく未来。
……ちなみに一番ため息をつきたいのは雪たちである。


「い・い・か・ら……もとに戻れてめぇはよぉ!」


ガタッ、と音を立てて獄寺は席を立ちあがる。
そして、教師をスルーしてつかつか、と未来の方に向かい……
思いっきり未来の後頭部を強打した。その勢いで未来はそのまま額を机に強打する。未来は頭を突っ伏したまま、ついに動かなくなった。


「っ……ご、獄寺が未来殺したー!!」
「ちょっ……はっ? ……んなー!?」
「未来!? 目を覚まして、未来!!」
「痛い……」


先ほどと同じく、むくりと起き上がる未来。今日はこんなんばっからしい。
だけど、先ほどとは違う未来の様子に、全員が頭上にクエスチョンマークを浮かべる。
どうにも、なんとなく大人しいのだ。


「大丈夫……。ごめん、心配掛けて……」


そういう未来の指先には、ピンク色の炎がともっていた。


「ピンク色の炎なんて……いないよね……?」
「ちょっと待って……この口調……リング……まさかっ!」


雪がはっとして顔を上げる。
きょとんとした、純粋そうな未来の顔が目に映る。
どう見ても、あの娘と瓜二つだ。


「クローム髑髏!!!」
「……? クロームが……どうかしたの……?」
「………………」


沈黙が訪れる。
誰もが口を開けないでいる中、ゆっくりとした動作で雪は頭を抱え始めた。
だが獄寺は、雪よりも早く既に頭を抱えていた。


「無理だ。大人しい未来なんて絶対ェ無理だ」
「ちょっ……諦めるな!! 大体、この物語の始まりは獄寺のせいだからー!!」
「あぁ、確かに俺は未来がもうちょっと大人しければ、つったが! こんなに大人しかったらもう未来じゃねーだろ!!」
「喜べ、お兄ちゃん!! 念願の未来が現実になったよ!!」
「うっせぇ! 大人しすぎだし、大体こんなの聞いてねーよ!!」


二人が授業をまるっきり崩壊して言い争いをしていると、突然にゅっ、と二人の間に腕が突っ込まれた。
二人は同じ動作で、その腕の主を見つめる。
相変わらず無表情で、だけど純粋そうな瞳で未来は眉を下げる。


「雪……隼人……喧嘩、ダメ……」
「……………………………………」


再び沈黙。
ついに、我慢できなくなった二人がほぼ同時に口を開く。
雪などは、未来の手を両手で掴んでおり半泣きだった。


「ごめん……ごめんねっ、未来……っ!!」
「悪かった……っとに、悪かったよ……!!」
「二人ともどんだけ未来が好きなんだ?」


やっぱり今まで全ての問題の源の未来が大人しくなっても、混沌は訪れるのだった…………。

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