「遅刻遅刻ー!!」


もうほぼ日課のように叫びながら走っているのは、まぎれもなく未来と雪である。
とはいえ、雪の方は本当に焦っている……が、未来はもう眠そうに目をこすっている。
未来にやる気がないのは今に始まったことじゃぁない。

ちなみにただいま9:55。10時になるまであと5分しかない。
遅刻したらリボーンに殺される覚悟をしなければならない。あの時間に煩いリボーンのことだ。
慣れている未来はともかく、雪はそんなのは嫌だろう。


「未来! こうなったら瞬間移動!」
「その手があったか!」
「……おい」


ここで登場するのは未来の能力、コピー。
未来はどこの誰の武器や技さえもコピーできて、自分の技にできるという何とも便利な能力である。
ちなみに説明すると、コピーをするには相手の武器を頭に強くイメージしなくてはならない。
つまり、それを応用して自分で想像した武器や技を思い浮かべ、それを自分の技にすることも可能だというのだ。
勿論、たとえば未来が雪の能力である、何かを凍らせる戦闘術をコピーしたとしても、本当の持ち主である雪には到底適うことはない。それは、本当の持ち主とそれを真似したもの同士の間にある原則なのだ。
ちなみに、ひょっとしたら雪が本気を出せば未来より強いかもしれないことがあったりなかったりあったり。

ただいま雪が言った、瞬間移動というのは未来が誰かからコピーしたものではなく、自分で想像して自分のものにした技である。
……だが本当に誰かに使われている技や武器と違い、自分で想像した武器や技は繊細なところが実在するものより曖昧だったりするので、残念なことにその本当の力を出し切ることは不可能なのだ。
ということは、未来の羽をはやして飛んだりするやつや、この瞬間移動は完璧に実現することはできない。……なので、未来が油断して羽をはやして飛んだりすると落下する可能性が、瞬間移動をすると時のはざまに巻き込まれてしまう可能性がある。
とはいえ、未来はいつもは変なところで失敗し足を引っ張るが、こういう場合、特に雪と一緒の時は手を抜いたことはないので、心配はないだろう。

そして、二人は手をつないで瞬間移動をした。



「……っせーな、あいつら……他のやつらはもう皆着いてるっつーのに……」
「まぁまぁ……きっといつもの寝坊でしょ? 待ってあげようよ……」
「未来のやつ……10代目に待たせた上、こんなセリフ言わせやがって!!」
「別にこのセリフを言わせたのは未来じゃなくて、自主的にそう言った俺だけどね?」


一方、並盛遊園地前では未来達とリボーンが呼んだ全員……未来と雪を除くが、がすでに到着していた。
その二人以外全員が来ているので、時間になっていなくても遅刻扱いになってしまっている。
遅い遅いとイライラしているのは今のところ獄寺だけで、他のみんなは普通にこれからの楽しい予定に話に花を咲かせていた。
特に騒がしいグループは、目を輝かせながら期待に溢れている。

その所へ、しゅん、とまるで風を切るような音が響く。
そしてどこからともなく、二人が現れた。


「ねぇ、まだ5分前だよね。遅刻じゃないよね!?」
「ギリギリセーフ」
「てめーら遅ぇんだよ!」


突如現れた二人に驚く様子も見せずに食ってかかったのは、やっぱり獄寺だった。
不良も黙る獄寺の怒りの表情に一般人ならビビって謝ってしまうところだが、そこはやはり未来と雪だ。特に雪は平然と笑顔さえ浮かべている。


「ごめんごめん……ほら、毎日恒例の寝坊です……」
「でもまだ遅刻じゃないじゃんか、隼人この野郎」


さすがに毎日恒例となると、未来は反省の色も見せずに挙句の果てに、この野郎とまで言いやがったのであった。
そんな反省の色を微塵も見せない未来に、獄寺拳をわななかせる。


「て、てめぇな……」
「およ、スクベル! 久しぶり!」
「ししっ、スクベルとか何だし。BLのCP?」
「ベル、なんでそんなこと知ってるの」


わなわなと震える獄寺を置いて、未来はいっそう目立つ金髪と銀髪のコンビに声をかける。
二人ともいつもの、真っ黒なコートを羽織っている。
未来が声をかけても薄い反応しか出ないが、雪が未来のそばに立つとヴァリアー組から一気に歓声があがる。
いまだに元・ヴァリアー雪の守護者の威厳は消えていないらしい。


「しししっ、久しぶりじゃん、雪」
「う゛お゛おぉぉい!! 元気にしてたかぁ!!」
「うるっさ……今この瞬間まで元気だったよ、スク」


久しぶりに聞いた爆音はダメージが大きかったのか、雪はびりびりと震える鼓膜を抑えるかのように耳をふさぐ。
それは悪かったなぁ゛!! と叫ぶあたり、何がいけないのか理解していないようだ。


「とにかく、全員そろったし、中に入るぞ」
「おー!」


リボーンのその言葉に精を出したのか、数人が明るく声をあげてリボーンのそれにこたえる。
そうしてぞろぞろと、まるでサーカスか軍隊か、15人が入口を目指して歩き出した。
個性的な面々に、道中の人たち全員の視線を集めたのは言うまでもない。

受付の女性に未来が無料券を出し、とっとと中に入っていく。
……ちなみに、受付の女性が何人いるのか数えるとき、ものすごく苦戦したのはまた別の話……。


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