転校生

「初めまして、僕は高城 未来です。今日からこの並盛中学に転入することになりました。どうぞ、よろしくお願いします」


クラスの真ん前、黒板を背に立ち頭を下げる未来。
言葉は柔らかいが、明らかに無表情だ。
それに対し、生徒たちは季節外れの転入生にざわつく。


「……こんな時期に転入生?」
「っつか僕っ子だ……マジでいるんだな」
「軽くヒくわー……」


否定的な声が上がっても、未来は素知らぬ顔をしている。
口調を変えるつもりももとからないのだろう、そろりとクラスを見回す。
そして綱吉が座っている位置で、その視線は止まった。


「……同じ学年だったんだ」


そう呟く綱吉は、驚きに目を見開いていた。
確かに並中の制服を着てはいたが、ひょっとしたら違う学年か違うクラスだと思っていたのだ。


「席はー……そこだ。 見えるか?」


そう言い教師は、一つの空いた席を指差す。
そこは、獄寺のすぐ隣の席だった。


「……あぁ?」
「あぁ、あんた……さっきの」


未来は歩きながらそう呟く。
そして抱えてきた学生鞄を机に置き、椅子を引きながら獄寺を見つめる。
そのまま小さく頭を下げた。


「よろしく」
「……チッ」


愛想悪そうに獄寺は舌打ちをする。
それでも未来は、獄寺からは視線を外さないまま席につく。
授業が始まってからも、未来はまだじっと獄寺を見つめていた。

その視線を、獄寺も痛いほど感じているのだろう。
少しだけ居心地悪そうに身動きをしている。
しばらくそれが続いた後、観念したように獄寺は未来に尋ねかける。


「……んだよテメェ人のことじろじろ見やがって……」
「ごめん。 不快?」
「当たり前だろーが!」

声を荒げる獄寺に教師の注意がかかる。
再び舌打ちをして席に座る獄寺を、相も変わらず未来は見つめる。
そしてようやく視線を外し、言葉を零した。

「……ごめん。 君が、僕の知り合いにすごく、似てて……」
「知り合い?」
「……うん、僕の……」


俯く未来はすごく悲しそうに、眉を下げていた。
言いづらそうに口を何度か開閉させて、ようやく言葉を紡ぎ出す。


「……お兄ちゃん」


その言葉に、獄寺はふと一人の少女を思い出した。
特徴的な青い髪を持ったまだ幼い少女。
だが確か同じ年で……いつも、獄寺について回っていた。
そして、一緒にピアノを……

嫌なことまで思い出して、獄寺は顔を顰めかぶりを振る。
そして改めて未来を見つめた。

髪の色は、全く同じだった。

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