帰りたい

「ただいまー」
「お邪魔しまーす」
「おっじゃまー」
「……で、なんで未来までついてくるの……?」


靴を整えながら訝しげに聞く綱吉。
それを聞きながら未来は綱吉に倣い、靴を整える。そしてキョトンとした顔で未来は綱吉に言い返した。


「僕もちょっとリボーンに用があったんだよ。いいでしょ別に」
「べ、別にいいけどさ……」


苦笑しながら、綱吉は自らの母に友人が来たとの旨を伝える。
台所から顔を覗かせた奈々は、おそらくいつも通り獄寺と山本きたのだと思っていたのだろう。
二人の男子の代わりに二人の女子の姿を見て目を見開いてから、いつも通りの笑みを浮かべた。


「あらあら、ツッ君ったら……女の子を二人も……ふふふ、お母さん嬉しいわ。誰が本命なのかしら」
「ちょ、か、母さん!?」


真っ赤になって慌てる綱吉に、未来はVサインを送ってみせた。


「大丈夫です! 綱吉君に僕は興味ありませんから」
「ちょ、未来……怒るよ?」
「冗談だって。怒るなチビ助」
「何そのキャラ。すごいうざい」
「……ごめん、綱吉の黒さは僕が生み出してしまったものなんだね。本気で黙ります」


二人がそんな漫才を続けている間にも、雪はキョロキョロと家の中を見回していた。
大方今まで日本家屋を見たことないせいで見慣れないのだろう、少しだけ居心地が悪そうだ。


「へー……沢田 綱吉の家って結構広いんだね。やっぱ一戸建てのほうがよかったかなぁ、私も……」
「いーやいや、アパートにはアパート、マンションにはマンションの良さがあるんだよー。 ペット飼えないのが痛手だけど」
「なるほど……あれ、未来もマンション?」
「ありゃ、そういう雪もマンションなのね」
「へー、どこどこ?」
「んーっと、隼人のすぐ隣。この家から5分位で着く、あのマンション」
「うっそ、あれって結構いいところじゃない?」
「そうかぁ? マンションなんて皆同じもんでしょ。そういう雪は?」
「んーっと、並盛中学校からすぐ近くのアパートにある……」
「あ、よく通り道で見かけるあれか! いーなー、学校から近いじゃん。 僕もそこ住みたいなー……」
「私は未来の家に住みたいよ」
「今度お互い、お泊まり会でもしよっか?」
「お、いーねー」
「あ、あの、二人とも…? もう彼此かなり、説明文なし会話文オンリーの小説になってるんだけど…」


明らかにメタ発言をする綱吉は、困惑を隠せていない。
それも無理はないだろう…およそ数時間前まで、彼女らは明らかに敵意を剥き出しにしていたのだから。


「……お、未来じゃねーか。どうしたんだ?」


ふと、足元から聞こえる声。
それに、三人は皆一様に下をむいた。

足を組み優雅にコーヒーを飲むリボーンは、どう見ても普通の赤ん坊ではない。
というかなんとも異常さを醸し出している風景だ。


「リボーン、久しぶり」
「あぁ……んで、隣にいるやつが……」
「そ、そうそう! リボーン、ヴ? ……んと、ヴァリ……アー? って、知ってる?」
「! ……あぁ、知ってるぞ。なるほどな、てめぇが9代目の言ってた……」


その言葉に、雪はこくんと頷く。


「……あなたが、アルコバレーノのリボーンだね? ……ねぇ……」


雪はペタン、と床に座り込み、リボーンと目線を合わせようとする。
眉を下げ、悲しそうな顔をする雪に、リボーンはただならぬ事情を感じ取る。


「お願い……9代目の意思を変える方法、知らない?」
「……なんでそんなことを聞く必要があるんだ?」
「帰りたい……ヴァリアーのいる場所に、帰りたいの……!」


そう悲痛に訴える雪の瞳には、うっすらと涙が光っていた。

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