ばさら ゆめ | ナノ



ハジメテ

「遥香、ぬしはいつまでこの状況を楽しむつもりか?」

空き教室、ここに遥香と大谷が居る。
二人がここに居る理由はひとつ。
遥香が学校中から嫌われ居場所が無いためである。

何故、遥香は嫌われてしまったのか。
理由は簡単、ある女に嵌められたから、

「フフフフッ、刑部に指摘されえるとは思いもしなかったわ。」

「われには到底理解できぬ。」

「理解?あなたに理解してもらおうだなんてこれっぽっちも思っていないわ。
だって楽しいに変わりはないもの!!」

遥香が高らかに言いあげる。


「楽しいのよ、満足げに醜い笑みを浮かべるあの女の顔を見るのが、あの女の周りをうろちょろする騎士きどりのあいつらの行動を見るのが、何より楽しい!!
あんなに醜い感情も行動もここに来て初めて見たわ!!こんなに痛い思いをするのも初めてなの、何もかも初めて、初めて…。
ねぇ刑部、お分かり?ハジメテって大切よ?
フフフッ嗚呼、楽しいわ…私、嵌められるのって初めてよ。初めてにしては…上手いでしょ?
適当にあの女の供述に矛盾が出てこないように演技して、
適当にあいつらを挑発して、
適当にどこかに逃げ込んで私のアリバイを無くすの、そしたら適当にあっちが私がしたことを作ってくれる。
あの女の乏しい発想力には毎回驚かされているけど…でもそれを真実だと思い込めるあいつらの脳味噌も目出度いものよねぇ。

それに…刑部は人に不幸が降りかかることをよしとしてるんでしょ?だったら今の私の境遇には大手をあげて喜ぶべきじゃないかしら?」


「我の望みは全ての人間に等しく不幸を振りまくこと、遥香だけでは無い。」

「フーン…どうでもいいわ。ところで何故私にくっついてくるのかしら?私はここで一人で居てアリバイを無くそうとしていたのだけれど?」

ついでに傷の手当。

「何故我が遥香と共に居るか…知りたいか?」

「…えぇ、とっても。ック!!」

知りたいと言った瞬間に大谷は遥香の首を締め上げる。

「何故、ぬしは気付かぬ、何故我の感情はぬしには届かぬ。何故我に靡かぬ、何故我に媚びぬ。
我はこれ程遥香を思っているというのに、何故だ?ぬしは変わった、あの女に嵌められてから、
否、われを見ることを止めよった。そんなにもあの女を見るのが楽しいか?そんなにもあいつらを見る方が楽しいか?
我はぬししか見えておらぬと言うのに、ぬしは我の気を引きたいのか?そうであろう?故に我の扱いを無下にしておるのだろう?
だが…そんなこと我には何の得も無い。有るのは遥香との関わりが減るということだけ。
そのような無情なことに我が納得するとでも思うたか?
愚かな遥香よ。我のことを見ぬと言うのなら、我の元を離れると言うのなら命を持っているぬしは要らぬ。
ただ我の横に居るだけの遥香になってもらおうぞ。」

徐々に遥香の首にかけてある手の力を強めていく。

「ッフフ…知って、た。」

一言遥香が言った。
その一言で大谷の手に込められる力が弱められた。

「何?」

離されたことによって気管に新しい空気が入り込んでくる。
遥香は激しく咳き込み次の言葉を紡ぐ。

「刑部が私に向けてる歪んだ思いは知っていたわ。あの女をたき付けて、学校中を操作して、私を孤立させて…でしょ?
勿論、知った上でのあなたの扱いよ。
そう、あなたが言った通り私はあなたの気を引こうとしてわざとしていたわ。
そして、大成功よ。
あなたはより私を求めるようになった。あなたのオトモダチ、石田を放っておいて私の所に来るほどね。」

「…我はぬしの思惑通りに行動したというわけか。」

「えぇ、」

「ふん…なんとも末恐ろしき思考を持った女よ。」

「その女を愛してやまないのはどなた?」

「ヒヒヒッ…。」

「ねぇ、そんな愛しい女からのお願いよ?聞き入ってくださる?」

「何ぞ?」

「もう、飽きちゃったのよ。そろそろ幕引きをしようかなって…そこでお願い。
あなたのハジメテ…私に捧げてくださる?」

「……相、分かった。」













「女。」

「ゲ…大谷、何よ、なんの用よ!!私の前に顔を出さない約束でしょ!?」

「我はぬしに用など無い。」

「だったら話しかけないでよ!!アンタみたいな不気味な奴私のナイトには必要ないんだから!!」

「さかしき女は好かぬ。」

「私だって、アンタみたいなの大っ嫌いよ!!」

「しかし、我の思い人の願いを果たさせてもらう。」

「は?」

「『飽きた』と遥香は言った。『ハジメテを捧げる』ようにと遥香は言った。」

「ハ?ちょ、何っ!?や、きゃぁぁああああああああ!!!!?!?」







「だから我は人を初めて殺めるといったハジメテを捧げようぞ。」







――――――――――
130000hit記念
瑠衣様リクエスト「婆娑羅の学パロで、悪女に嵌められ楽しんでいる性悪主ととんでもなくヤンデレな刑部。最後は飽きたと言って刑部が悪女ぶちのめす感じ。」でした。

リクエスト通りになっているか…どうでしょう…?
何分、練詠がBASARAにハマっていたのは…2まででして…3は手つかずだったんですよね…刑部も…「え?誰?」状態で……実に無知でスミマセンoyz
でも精一杯書いてみました!!
大谷さんの口調がいまいち謎で、gdgd感は否めませんが、気に入って下さったら嬉しいですー…。


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