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「学校に来てみたものの…サボるしかねぇよなぁ……。」
学生の領分は勉強だ、と誰かが言っていた気がする。
だから友哉は一応、学校へと登校した。
しかしどうだろう、既に友哉のキャラは一般人にも平気で暴力をふるう奴だと言うもので確定されていた。
そんな事実は無いと言うのに、人の噂とは恐しい。
友哉は先生さえも怯えるこの状況が居た堪れなくなり屋上へと自身を移動させたのだ。
屋上に寝転んでぼんやりと空を眺めていると入り口の方から声がした。
「なんじゃ、珍しく先客が居るのぉ。」
「あ?アンタ誰。」
友哉が怪訝そうに入口の方を見ると銀髪頭の一般生徒ではなさそうな風貌の少年が立っていた。
「俺の名前は仁王雅治じゃき。よろしく頼むぜよ。血濡れた喧嘩人形さん?」
「んだ?俺のそのあだ名知ってるってことは俺に力試しでもしに来たか?良いぜ。相手になってやんよ。」
上半身を起こして銀髪の少年を睨みつけた。
「冗談言いなさんなって、俺は不良と違うけ、力試しなんかせんぜよ。
ただおまんのあだ名を知っとる一般人じゃ。」
よっこいしょ、と言いたげに仁王は友哉の隣に座った。
「一般人でその頭かよ。」
「残念ながらこれは地毛じゃ。アンダーヘア見て確認するか?」
「バカかテメェは、初対面で下ネタかましてきてんじゃねーよ。」
「すまんのぉ、おまんはいける口じゃ思うたけぇ。」
「ハハハハ、お前面白い奴だなぁ。俺の事を恐れねぇでこうやって冗談かましてきて?
頭イカレてんじゃね?」
「なんじゃ、失礼な奴じゃな。サボっとる奴を見かけて同志じゃ思うて話しかけたんに…。」
「同志て…お前、俺の噂知ってんだろ?よく同志だなんて言葉使えたな。」
「噂?あぁ、おまんが一般生徒さえも見境なしにぶん殴っとる言うやつか。」
「…………あぁ、…普通だったら寄ってこねぇはずだろ?なんか企んでんのか?」
「疑り深い奴じゃなぁ。なんか企んどったなら名乗らん。
それに、外見で苦労する気持ちは分かるけんのぉ。俺は自分の目で見たことしか信じんぜよ。」
「お前…見た目に反して常識人だな。」
「それ見てみんしゃい、おまんも俺を外見で判断しよった。」
「あ、…ワリィ。」
「のう、おまんの名前、なんじゃ?」
「は?」
「じゃから血濡れた喧嘩人形は本名と違うじゃろ?本名教えんしゃい。」
「守本友哉だぜ?仁王君?」
「ほうか友哉か、了解じゃ。
じゃけど、君付けは止めんしゃい。おまんのキャラと違うじゃろ。」
「ツッコんでくれなかったらどうしようかと思ったよ。」
「プリ、やっぱ友哉はユーモア溢れる奴やったのぉ。予想通りじゃ。」
「俺がお前の予想と反してたらどうするつもりだったんだよ。」
「そん時は話反らして逃げとったぜよ。スポーツやっとるだけで喧嘩は強うないけぇのぉ。」
「スポーツなんてやってんのか。」
「テニス部に所属しとるぜよ。ついでにレギュラーじゃ。」
「似合わねぇ!その頭だとバスケ部っぽくね?」
「それ偏見言うけんな。
それにテニス部レギュラーには赤髪も青髪もワカメもハゲも居るんじゃぞ!?」
「なッそれスゲェな。俺の前の学校のテニス部はそんなの居なかったぜ?しかもハゲって…この年から禿げてたらヤバくね?」
「そうじゃのぉ。じゃけど、友哉…おまんもそんなに脱色して色入れとったら二の舞じゃけぇ。」
毛根死滅するぞ、と仁王がケタケタ笑った。
「なッ!?これは俺のアイディンティティだぞ!!否定すんn――!!」
思わず大きい声を出して否定してしまった友哉。
慌てて仁王は友哉の口を塞ぐ。
「バッ、友哉今は授業中でサボっとる立場忘れるんじゃないぜよ!?そんな大声出したら!」
「…んだよ。」
仁王の焦りを全く理解しない友哉は仁王の手を自分の口から剥がす。
するとどうだろう、入口の方から激しい足音と、奇声が聞こえてきた。
「―――キェエエエエ!!仁王、またお前はサボったのか!!何度目だ!!」
「あ?」
「来よったッ、早か!!」
「仁王君と、おや?転校生の守本君ではありませんか。二人で仲良くサボりですか?感心しませんねぇ。」
「サボるなどとはたるんどる!!鉄拳の上反省文だぁあ!!」
「あ?先公が生徒に体罰?うわー…ひくわぁ。」
「や、柳生も居る!?…友哉、残念ながら黒髪の方も生徒ぜよ。」
「え……。」
「と、とりあえず、逃げるぜよ友哉!!」
「お、おぉ!!」
友哉は仁王に言われた通り屋上から二手に分かれて逃げようとしたがあっちも二人である。
友哉と仁王は二人から逃げ切ることが出来ずに捕まって、鉄拳を食らったとに反省文を書かされた。
しかしながら友哉としては久々に一般人が自分に関わってくれたことが少し嬉しかったりした。
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