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不良達の後ろから声をかけた友哉。
片腕をあげヒラヒラと手を振っている。
ヘラヘラと笑っている様は喧嘩が強いとは全く見えない。
「「「なッ!?」」」
一同が驚く、まさかタイムリーに登場するとは思っていなかったから。
「兄貴、こいつです!!多分!!」
「そう、俺です。つーわけで、その他モブは消えろ。」
「ぁあ?舐めとんのか。」
「来るなら来い、消えないんなら力づくで消す。」
不良達は挑発に乗り、友哉に拳を振り上げる。
しかし、友哉には届かなかった。
届く前にすべて弾かれた。
そして戦闘不能になった不良たち。
「あー…弱ッ。ほら、もう学校内入ろうぜ。これから朝練なんだろ?謙也。
あ、ちょっと謙也借りてくよ…し ら い し クン。」
白石の名前を最大限、嫌味に発音して謙也の腕を引っ張り門の中へと入って行った。
「ちょっ…な、んで……俺の名前…、」
友哉は歩いていた足を止め、謙也と向き合った。
「気付かねぇ?俺だよ。俺、守本友哉だぜ?」
「ぇ…え?う、嘘や。」
みるみる大きく開かれてく謙也の目。
「『もちろんいいぜ。平気ならなおさらだ。ハッピーエンドを飾ってこい。』……って言って、飾ることが出来たんだよな。」
「ホンマに…ホンマに友哉なんか?」
「あぁ、」
「幽霊とかや…ないんよな。」
「この立派な足が見えねぇのか?グオォッ!?」
強い衝撃が友哉を襲った。
勢いよく謙也に抱き着かれたからだ。
「友哉、友哉ッ友哉!!!」
友哉はポンポンと謙也の背中を叩く。
「フゥ……仲間とは、前の関係に戻れたんだな?」
「…おん。」
「…テニス、楽しいか?」
「おん。」
「今、幸せか?」
「おん!!友哉おおきに、ホンマおおきに!!!」
「おいおい、そこまでの関係に持っていけたのは謙也自身の力だろ?」
「せやけどッ…やけど、友哉が居らんかったら俺、きっと諦めてたと思うんや…。
それに、あの時ちゃんとお礼を言えんかったし、もし…もし、もっぺん会えるならしっかりお礼伝えよう思うて!!ありがとう、ホンマに…ありがとう!!」
鼻をズピズピ鳴らしながら謙也が感謝の言葉を紡ぐ。
「泣くなって、な?俺はお前が笑ってる方が好きだから、笑ってくれよ。」
「おんッ…。」
涙を荒々しく拭って、精一杯の笑顔を友哉に見せた。
そしてそれに合わせるかのごとく、友哉も穏やかに笑い返した。
「謙也の笑顔、初めて見たよ。」
「俺に憑いとったときはまだあの境遇の真っただ中やったしな。」
「ハハッ、それもそうだなガハァッ!!!」
今度は後ろから背中に強い衝撃が、
振り返ってみるとそのタックルをかましてきた奴の頭が見えた。
そして耳には色とりどりのピアスが見える。
「……財前…か?」
「……はいっす。友哉さんの舎弟の財前光っす。」
「久しぶり…だな。」
「ッ、会えるなんて…思ってもみませんでした。」
「俺も、お前らに会えるとは思わなかったぜ?」
「お前、らっすか?」
「そうだぜ。謙也に光、それから…会いたくもねぇけど白石にな。」
「………友哉さんはなんでここに居るんすか?」
話を大きく変えた。
「ん?立海生の交換転校生の代役で来たんだぜ?」
「友哉さん…だったんすか……。」
「まぁ、始めは別の奴だったんだけどよ。そいつの頼みは断れねぇっつーか…。」
「……ッ。」
だんだんと友哉に回している腕に力がこもる。
「…財前クン?…ちょーっと苦しいかな?」
「あ…すみません。」
そういって財前は抱き着いている体勢を止めた。
「お詫びに職員室まで案内しますわ。」
「マジでか、ラッキー!」
「謙也さん、部長に言うておいてください。」
「了解や。」
「じゃ、友哉さん行きましょう。」
友哉は謙也と別れ、財前について職員室まで案内してもらうことにした。
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