俺はお前で、 | ナノ

再会?
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財前と謙也が侑士の家に遊びに来ていた。
そして関東散策、侑士は部活で今は居ない。
只今、日も暮れ午後7時。

「謙也さん、もう帰りたいっすわ。」

「や、ちょッ…もうちょっとや、もうちょっとだけ俺に悩む時間をー!!」

「はぁ…。」

謙也が何に悩んでいるかというと、色々な形をした消しゴムがいくつも有るという何とも謙也ドストライクな露店があったからだ。
手持ちの金も少なく「それ、ぜーんぶ頂戴。」などとは言えない状況であるため吟味している形だ。
財前にとっては暇でしかないこの時間。

「……スピードスターちゃいますのん。物選ぶんも速よぅして下さい。
それともスピードスター(仮)になりますか?」

「アホ抜かせ!!ッ………決めたで!!これとこれとこれや!!」

「ありがとうございましたー。」

謙也が指示した消しゴムを袋に詰め愛想のいい笑いを浮かべ店員は物を謙也に渡した。

「っあー、ええ収穫があったでぇ。」

ほくほくとしためちゃくそいい笑顔をしている謙也。

「…チッ、うざいっすわ。」

対照的にかなり冷めている財前。

ドンッ――

「あ?」

財前が何かに当たった。

「イッテェー…。」

どうやら人にぶつかってしまったようだ。
外見からして高校生だろう。

「…すんませんした。」

そのまま目的地に歩いて行こうとした。

「おい、待てよ。」

腕を掴まれたようで進めない。

「なんすか、さっき謝りましたやん。」

虫の居所が良いとは言えない財前。
態度はあからさまに上から目線だ。

それを横でハラハラとオロオロとみている謙也。

「それで詫びか。テメェ、バカか?」

「…バカでもなんでもええですから離してくれません?俺、もう帰りたいんで。」

「調子に乗るなよ、ガキ…面貸せ。」

「ハァ…関東人はキレやすいなぁ…。」

そのまま財前は腕を引っ張られどこかの公園に連れて行かれた。

「ちょ、待…。」

「てめぇもだ。」

「……仲間が…居られたんやな………。」

謙也も同様に連れて行かれた。

一級フラグ建築士である。


連れて行かれた先は街灯もほとんどなく、
なんというか、どうぞそこでリンチでも何でもして下さいって言っているような寂れた公園だった。


「謙也さんのせいですわ。」

「なんでやねん!!」

「謙也さんが消しゴムなんてつまらんもんに時間をかけたからに決まっとるやないですか。」

「……すんませんでした。」


「お前ら調子のってんの?今どういう状態になってんのか分かってねぇの?」

「なんや?自分らがしとる行動ですら人に聞かんと分からんのんか、ハッ!ダサいっすわ。」

今の状態は財前と謙也が複数人の敵に囲まれてる状態。

「光ー、もうやめてや!!なんでそない相手を挑発するような真似するんやーっ!!」

既に涙目な謙也。
絡んできた奴らの怒りがいつ爆発するか分からない状態にビクついている。


「何呑気に喋ってんだよ。目上には礼儀正しく接しろって知らねぇのかよ、その体に教え込んでやろうか?ぁあ?」

「遠慮しときますわ、それに俺にとっての目上の人はただ一人だけや。」

「それを礼儀がなってねぇっつってんだよ!!」

ついにキレて殴りかかってきた。

「ッぶないやないですか。穏便に済ませるってことできないんすか?」

「ざっけんな!!」

「光のアホ!!自分こそ何で火に油を注ぐようなセリフしか吐けんのや!!」

「これが俺の基本スペックっすわ。」

「あー…。」

「なんでお前らなんで避けれんだよ!!」

不良が言った。
当たり前だ、この公園には街灯がろくに無く。
一寸先は闇状態。
目が慣れてくるのはもう少し時間がかかるだろう。

なのに二人は襲いかかってくる拳を的確に避けている。

「やって俺、そういうの敏感になってしもうたし…殺気って言うん?そんな感じのでよう分かるで?」

「謙也さんのはヘタレのためにあるようなスキルっすね。」

「やかましい!!」


「チッ、……おい他の奴ら呼んで来い。」

連れの一人に声をかけた。

「なんだよ、徹底的にやるつもりかよ。」

「たりまえだ。こんなガキに舐められたまま終われるか!!」

「はいはーい。」

一人の仲間がどこかに行った。

「なぁ…これまずい状況になったんちゃうか?」

「そうっすね、なってしもうたっすわ。」


十数分後、ぞろぞろと人が寄ってくる。
お世辞にも素行が良いとは言えないメンツばかりだ。

「お前ら、今更後悔しても遅ぇからな。」

「後悔ならとっくの昔にしとるわ!!」

「………なんでや?ここに居る奴ら片付ければそれでええんやろ?」

手をバキバキ鳴らせながら財前は好戦体勢に入る。

「え、光…そんな好戦的な奴やったっけ?」

「友哉さんの舎弟になったんや、ケンカが弱いなんてマネ晒せませんよ。
それにここ、よう考えたら関東やないですか、暴力沙汰起こしてもバレません。」

今までに見せたことのないぐらいの黒い笑みを浮かべる財前。

「ヒィッ!?友哉の影響がここに!?なんちゅう弊害や!!」

「謙也さん、逃げてもええですよ。」

「ホンマか!?」

「キング・オブ・ヘタレになりますけどね。」

「………逃げへんし、やったるわ。俺かてちゃんと動けば強いってこと友哉が証明してくれたわけやし。」


二人vs複数人
それでも互角。

もともと謙也達はスポーツをやっていて均等に筋肉がついているし、しなやかな体を持っている。
敵を攻撃するのも、
敵の攻撃をかわすのもお茶の子さいさい。

が、しかし。
選手生命を断ちたくないという気持ちから一瞬の隙を作ってしまった二人。
ものの見事に拘束された。

「やーっと、捕まったな。」

ニヤリと笑いかけてくる。

「やーっと捕まえることができたんすか。おっそ…。」

「ぬかせ、ガキが!!」

「グッ!!」

腹を殴られ激しく咳き込む。

「光!!」

「…………っう。」

下を向いて唸る。

「やっと静かになったな。…ほら、喋ってみろよ、ハハハッ。」

下を向いてる財前の髪を持ち無理やり上を向かせる。
耳に触るような笑い声。

「やめッ光を離し!!グ、ェ…。」


「人の心配なんかしてんじゃねーよ。」

「どうすんだよ、こいつ等金持ってなさそーじゃん?」

「金なんて今回はどうでもいい。ただこいつらをいたぶれればそれでいいんだ、よ!!」

殴る殴る、
音が絶えない。途切れない。




「なー、喧嘩なら俺も混ぜてくんね?」

公園の入り口の所から声が聞こえた。
シルエットしか確認できない。

「誰だ!!」

「俺様だ。」

「舐めてんのか!!」

「別に?ホラ、俺も参戦だ…来いよ。」

「ッルァアア!!」

謙也達を放り、拘束していた奴も後から登場した男に向かって攻撃してくる。


そして、数分だった。
数分で物音がしなくなった。

「ハーー…お前ら弱いな。なんでそんなに弱いわけ?」

転がる男たち、
無傷の男。
実力の差が顕著に表れている。

「えっとー…お前か、リーダは。」

そう呟いてリーダー格の人物の胸ぐらを掴み上げ無理やり立たせた。

「テメェはいったいここで何をしてたんだ?あ?」

「グッ、おめ…には関係な……ッ!」

「あー、うんまぁ直接的には関係ねぇけど。俺の縄張りでそんなことされちゃぁ、結構腹が立つんだよね。
喧嘩は思う存分やれ、タイマン推薦だ。
リンチによるカツアゲは止めろって…そんな指示、俺は前に出したぜ?」

「何言って…ッ。」

「見えねぇ?俺の顔。」

男に顔を近づける。

「お、お前は…!お前の歩いた後には地獄絵図しか残らないという噂の、魔の破壊神…!?」

気づいたようで、顔が真っ青に染まる。
脱色した髪、ところどころに入っているメッシュ。
関東の学校をしめている守本友哉だ。

「おっとそれは俺の黒歴史だから口に出してんじゃねーよ、タコォ!!」

そのまま頭突きを食らわして沈めた。
胸ぐらを持っていた手を離し、地面に落とす。

立っているのは友哉だけ、

「あー、久しぶりに喧嘩したなぁ。
やっぱりこういう街灯のないところだと俺って分かんねぇみてーだし、ラッキー。
おい、お前ら平気か?まだ金とかとられてねぇよな?」

力なく座り込んでいる二人に声をかけた。

「あ…はい、まぁ……。助けてくれてありがとうございました。」

謙也が信じられないものを見た、という茫然とした面持ちで返す。

「いーってことよ。俺だって喧嘩が出来たことだし、
つかそのイントネーション大阪の人か!?」

「そうですけど…なにか?」

「別に!懐かしいなって思っただけだ。
立てるか?」

「あ、はい。」

スクッと立ち上がる謙也。
友哉の方を向いたまま立たない財前。

「お前…立てないのか?病院行くか?」

「いえ、…立てます立てます。」

遅れながらも立ち上がった。

「よかったよかった。お前らもう遅くなったら夜歩き回んなよ!!じゃーな!」

簡単な挨拶をして友哉は入ってきた場所から帰って行った。

「なぁ、光?」

「なんですか?」

「ええ奴、関東にも居ったな。」

「……っすね。」


「……なぁ、これ侑士とかになんて言い訳しよう?」

自分たちの姿はボロボロだ。
ただ過ごしていただけではこんなことにはならないような状態。

「謙也さんが階段でこけて俺も巻き込まれたっちゅーことでいきましょ。」

「!?なんでや!!」

「ハァ…話すのめんどくさいっすわ。」

「なんやねん!!」

ギャーギャー騒ぐ謙也を尻目に財前はさっきの人物のことについて考えていた。


もしかしたらさっきの人は友哉さんだったんとちゃうんか?
や、でも…あんな現象が起こるんやったら…他の世界からっちゅー線もある。

……まぁ、でも…さっきの人が友哉さんだったとしても、こう対処するんが適当やったやろうな。
ここで騒いで謙也さんの意識の中にわざわざもう一回友哉さんをいれることせん方がええし、

もう一遍会うことが出来る可能性が出来た。
この世界に居る限り、会える。

次会う時は謙也さんも誰も居らん、二人きりの時に会えたらええですわ。

ねぇ、友哉さん?






――――――――――――――――
100000hit企画最終弾
渚様リクエストの「財前と元に戻った謙也で主人公に出会ったら?」でした。

残念ながら相手を認識せずに終わってしまいました!!←
続編も決まってますし、そこでめぐり合わせてあげたいんですよ。特に謙也。
だからうっすらぼんやりとした再会…。実にすみません!!

最後には何故か財前さんは病みましたし、どういうことでしょうね!!一体←

そして無駄に長い。もう少しシェイプアップできなかったのか…?

そしてアンケートで今トップをマジで独走している厨2的異名を使ってみました。
うん…恥ずかしいよね。


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[mokuji]

mark
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