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「ホンマに、悪かったと思っとんか?
折角の機会やけん言わせてもらうわ。俺、ホンマ辛かったんやで?仲良かった奴らに殴られて、虐められて…せやけど、いつかまた一緒にテニスができるようにって俺は耐えてきたのに俺しか仲間って思っとらんくって、俺の大切なラケットまで壊されて。俺は逃げた。俺は死んだ。
自分らに仲間やないって言われて俺は、死んだんや。」
「……っ。」
白石は自覚する、自分が謙也に対してどんな暴言を吐いていたか、
友哉に指摘されながらも自分の記憶だけでは思い出せなかった言葉。
それだけ白石は「仲間じゃない」という言葉を軽い気持ちで言い放っていたのだ。
嗚呼、なんて無責任。
「俺かて人間なんや。まだまだ子供なんや。そんなん耐えれるやけ無いやろ?やから俺は、逃げた。何もかもすべてから逃げ出したわ。
お前らなんてどうでもいいって思った。俺だけが仲間だって思っとることがバカらしゅうなったしな。
けどな、俺がうっすらと意識を取り戻した時に白石と喧嘩しょうるやん。白石にマウントとって。
そのまま友哉に思いっきり殴られてまえって思ったわ。
せやけど、やっぱ。殴るところは見たくなかった。仲間やないって意識しとっても、無理やったわ。やっぱり自分らは仲間やって思いたかった。
……俺ってホンマバカやな。
それに友哉が殴ったら俺はもうこの体に戻って自分らと仲良く出来んような気がしてな。」
「謙也ぁっ……ホンマごめん。」
白石が目に涙を溜め謝る。
「泣かんといてや…あー友哉もこんな思いやったんかなぁ?」
謙也が泣き出しそうになった白石を宥める。
「「「「「ッごめんなさい!!」」」」」
白石以外のメンツが謙也に謝る。
謙也は静かに目線を動かし頭を下げているメンバーに向かって言い放つ。
「…………やっぱ…許せへん。」
!?
その場が凍りつく。
しかし次の瞬間にはその場は笑顔に満ちる。
「でもなもう一回、新しく俺の友達になってくれんか?」
「「「「ええに決まっとるやん!!」」」」
「初めまして忍足謙也です。俺は自分らとテニスがいっっぱいしたいんや!!」
(やっぱお前は優しいな。)
「(そうか?)」
(そうだっつーの、俺だったら一発ずつ殴るくらいはしてる。)
「(怖いなぁ友哉は。)」
(………………。)
「(友哉?)」
(あ…わり、なんかすっげぇ、…眠ぃ。)
「(もしかして元の体に戻るんか?)」
(かも、しれねぇ…。)
「(そか…友哉、ホンマ、ホンマ助けてくれてありがとな!!)」
(んだ…俺は、喧嘩して…ただけ。も、限界…謙也、もういじめら…れたりすんな…よ。)
「(おん!!)」
そして謙也の体から友哉の気配は消えた。
それに気づいたのは謙也と、財前。
「―――――友哉さん。」
「―――、―――――友哉。」
「んあ?……あれ?なんで幸村が学校に居んの?…………あれ?ここ何処。」
「ここは学校じゃないよ、俺の入院してる病院。
君、学校の屋上で倒れてたのを君のさぼりを取り締まりに行った真田に発見されたんだよ。」
「へ、え?俺寝てただけなのに…。」
「フフッ寝てただけ?君は3日間も寝っぱなしになる位何をしてたのかな?」
「は?ハァア!?!?3日!?」
「そう3日。」
「えーーー、……あれ現実とリンクしてたのか?」
「ん?あれって何だい?」
「俺、人助けしたんだぜ。」
「何だい?その面白そうな話、聞かせてよ。」
「いいぜ?俺が助けたやつってーのはな…とんでもなくヘタレで…とんでもなく仲間思いの奴だった!!」
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