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「お前ら、最低だな。」
「ハァ!?最低のお前に最低なんか言われたくないわ!!」
「お前らなんて人殺しだ。」
「「は?」」
「お前らが謙也を嫌ってるのは知ってる。
けどな、謙也はな!!仲間のお前らとまたテニスしたいって、誤解を解きたいって、俺がお前らを殴らないようにって、俺のストッパーになってくれてたんだぜ?こんな優しいやつになんてことを言ってんだよ!!」
「は?言うてんの、謙也はってお前が謙也やろ。」
「……一氏とか言ったな。謙也は今までにお前らが言ってきた行為を一回でも肯定したことあったか?」
「無いで、ホンマ嘘つきは嫌やわ。」
「(謙也…本当に頑張ってたんだな。)お前ら、近々後悔することになるからな。謝罪文でも考えとけ。」
「ハッ、お前がマネに謝罪しろや。」
友哉は部室から去ろうとした。
「ちょい待ち謙也、人殺しってなんやねん。」
白石が友哉の腕を掴み、去ることに邪魔をする。
「チッ離せよ。」
白石を睨みつけ白石の腕を乱暴に振りほどき部室を去る。
友哉が部室を去り部室の中は謙也に対しての悪口の嵐となった。
口々に言う悪口が飛び交う。
そんな中、ずっと黙っている少年が一人、財前光だ。
謙也さんが…友哉さん?
そんなこと、でもあのシルエットに、声に、髪の色も…よう分らんかったけど友哉さんも髪の色抜いとった様な…共通点がありすぎる。
また友哉さんと会えんかな…そしたら確かめられる。
財前少年はまた夜の街に出歩こうと決意した。
夜になり友哉は目的もなく夜の街を歩いていた。
「くっそ!!謙也ぁ!!」
イラつく、イラつく、
友哉は謙也のせいでここに呼び出されたというのにその本人が消えてしまってはどうにもならない。
しかし謙也が憎いという感情は不思議となかった。
逆に謙也が可哀想で仕方なかった。
あんなにも仲間思いの奴がこんなつらい目に合っているのか、それを無残にも否定され謙也は、
死にたい と初めて言った。
自虐的なことは出会ってから言っていたが死にたいだなんて、そんなこと一度も言わなかったのに。
友哉は幾度となく謙也に呼びかけるが謙也は一向に応答しない。
本当に居なくなってしまったのだろうか。
「おいおい、勘弁してくれよ。お前があいつ等と仲良くなんなかったら俺戻れねぇんだぞ。」
歩いて不良に絡まれることがあったらそいつを容赦なくぶん殴る。
ストレスの発散だ。
「友哉さん!!」
「あ?」
不意に自分の名が呼ばれ振り返る。
そこには財前の姿が。
「友哉さんっすよね。」
「………財前か…なんだ?俺は謙也をいじめる様な奴今一っ番ムカついてんだよ。お前も謙也を虐めてたんだろ?」
「…………友哉さんと謙也さんは二重人格なんですか?」
「…お前に教える義理ねぇよ、舎弟になったら教えてやってもいいぜ?ハンッ。
………もう一遍言う。俺は謙也を虐めているお前が嫌いだ。俺の視界から消えろ。」
「俺は謙也さんを虐めてなんかない!!ただ、見ていたっ」
「それはな苛められてる側からしたら加害者と同じなんだよ。謙也言ってたぜ?俺を嫌ってるやつ、だって。」
「っ……。」
財前は指摘されたことで涙目になる。
好き…とまではいかないが、助けてくれた恩人に、また会いたいと思っていた恩人に指摘されるとつらいものがあった。
「あー…泣くなって、俺は人を泣かせる天才か。」
財前は流れそうになった涙を堪え、決意したような顔になる。
「……友哉さん、俺を友哉の舎弟にして下さい。」
「舎弟?……ハッ、そんなの俺は要らねーよ。…欲しくねぇよ。」
「舎弟になったら友哉さんと謙也さんの関係を教えてくれるって言いましたやん。俺友哉さんのこともっと知りたいんすわ。
それに謙也さんを自分がしてた行為で傷付けていた、それを償いたいんや。」
「…………思い切ったこと言うなーお前。
けど、謙也がいやだっていうかもしれねーから、やっぱいらねー。教えねー。
舎弟になりたかったら髪染めるなりピアスでも開けるなりして覚悟を示して来いよ。そしたら考えてやってもいいぜ?…………………じゃ、さいならー。」
友哉は財前から逃げるように謙也の家に帰った。
寝る前、謙也に呼びかけてみたがやっぱり反応はなかった。
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